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院長日記

3. 消化管手術と貧血との関係について

武本 重毅

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ビタミンB12の吸収には内因子とよばれる糖タンパクが必要であり、それを分泌する壁細胞は胃体部(胃底部)に存在するので、胃体部(胃底部)を切除するとビタミンB12吸収率は著しく低下する。胃全摘後にビタミンB12を投与しないと(体内貯蔵5年で欠乏)、約2~10年(平均的には5,6年後)で巨赤芽球性貧血を発症する。また、胃酸の分泌が減少すると鉄の吸収に必要なイオン化が阻害され、鉄欠乏性貧血を生じる。胃部分切除では鉄欠乏性貧血が最も多く認められる。食事で摂取した鉄は十二指腸から空腸上部で吸収される。

したがって、胃切除により悪性貧血(ビタミンB12欠乏)、鉄欠乏性貧血、十二指腸切除により鉄欠乏性貧血、回腸切除により巨赤芽球性貧血(ビタミンB12欠乏)が起こりえる。また大腸がん手術前後の出血による貧血も起こりやすい。

Author:

武本 重毅

聚楽内科クリニックの院長、医学博士。