スマートウォッチで血糖測定? ― 正確さと安全性について知っておきたいこと
こんにちは。聚楽内科クリニック院長の武本です。
最近、スマートウォッチや指輪型のウェアラブルデバイスで 「刺さずに血糖値が測れる」 という広告を見かけた方も多いのではないでしょうか?
しかし、これらの機器で測った血糖値をもとに糖尿病治療を行うのは、現時点では非常に危険です。今回は、その理由についてわかりやすくご説明します。
◆ アメリカのFDA(食品医薬品局)も「承認していない」と発表
2024年2月21日、アメリカのFDA(日本でいう厚労省にあたる機関)は、スマートウォッチやスマートリングなどによる非侵襲(刺さない)血糖測定機器は、いずれも承認していないと明言しました。
なぜなら、これらの機器の測定値は不正確であり、誤った数値をもとに治療すると低血糖や高血糖など重大なトラブルを招くおそれがあるからです。
◆ 日本でも、まだ承認された機器は「ひとつもない」
日本でも、医療機器の承認を行っている「PMDA(医薬品医療機器総合機構)」が、スマートウォッチ型の血糖測定機器を承認した例は2024年4月現在、存在しません。
つまり、日本で販売されているスマートウォッチで血糖値が表示されても、それはあくまで「参考値」であり、医療には使えないということになります。
◆ 中国の研究でも「正確性に問題あり」
2022年に中国で行われた研究では、23人の健康なボランティアの血糖値をスマートウォッチで測定し、従来の血糖自己測定器(SMBG)や持続血糖モニター(CGM)と比較しました。
結果は、スマートウォッチの測定精度は大きく劣っていたというものでした。
◆ 当院からのアドバイス
糖尿病の治療では、わずかな血糖値の違いが治療方針に大きく影響します。誤った情報をもとにインスリンの量を調整したり、薬を飲み忘れたりすると、低血糖・高血糖を起こしてしまうリスクがあります。
そのため、現時点ではスマートウォッチでの血糖測定を治療目的で使うことは避けてください。
信頼できる医療機器(自己測定用の血糖測定器やCGM)を使い、医師の指導のもとで血糖管理を行うことが、最も安全で効果的な方法です。
これからも、医学の進歩とともに「痛みのない測定」や「手軽な管理」が可能になる未来が近づいているのは事実です。ただし、現段階では正確さと安全性を最優先に、一緒に健康管理を続けていきましょう。
ご不明な点があれば、どうぞお気軽にご相談ください。
院長 武本 重毅