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クリニックからのお知らせ
「ずっと作りかけのラブソング 〜医師としての私の物語〜」
皆さん、こんにちは。
私は、医師になって、もう35年が経ちました。
今振り返れば、それはまるで、
“ずっと作りかけのラブソング” のような日々だったと思うのです。
最初のフレーズを書いたのは、研修医の頃。
まだ何も分からず、ただ必死に目の前の患者さんと向き合っていた頃。
不安そうな表情、震える手。
「助けてほしい」という言葉にならない声に、
どう応えたらいいのか分からず、ただそばにいることしかできなかった――
そんな1ページ目でした。
次に書き加えたのは、研究者としての葛藤の時間。
病気の仕組みを知りたくて、
がん、免疫、HTLV-1… 目に見えない敵を追いかけ続けた。
でも、どれだけ知識を積み上げても、
すべてを救える魔法の答えなんて、どこにもなかった。
それでも、「いつかきっと」…と願いながら、
私はその“歌”を、書き続けてきました。
35年という時間の中で、気づいたことがあります。
命とは、数字ではなく、物語なのだということ。
患者さんひとりひとりに、人生があり、家族があり、希望がある。
私が歌ってきた“ラブソング”とは、
その物語に、少しでも寄り添いたいという、願いの詩だったのかもしれません。
これからも、きっと私は
この“作りかけの歌”を完成させることはないでしょう。
でも、未完成だからこそ、
今日もまた、新しい1行を書けるのです。
そして、私の歌が、誰かの明日を照らす一節になれることを願って、
私はこれからも、歌い続けます。
――医師として、研究者として、人として。