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院長日記

老化に伴う視床下部(ししょうかぶ)の変化

武本 重毅

ホルモン分泌・自律神経・体内リズム・体温・摂食・睡眠など、生命維持に直結する機能の広範な低下を引き起こします。

視床下部は「体内の総合司令塔」とも呼ばれ、その加齢変化はさまざまな老化現象の背景にあります。

【1. 視床下部とは?】
脳の中心部にある小さな構造で、内分泌系(ホルモン)と自律神経系のコントロールセンターです。
主な役割:
• 下垂体へのホルモン指令(視床下部‐下垂体‐末梢臓器系)
• 自律神経調整(交感神経/副交感神経)
• 体温・血圧・心拍・代謝・摂食・睡眠・性機能の調整
• 日内リズム(概日リズム)の維持

【2. 老化に伴う主な変化】
機能               老化による影響
ホルモン調整    GnRH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)やGHRH(成長ホルモン放出ホルモン)が低下
体温調節         恒常性の維持が困難に(寒さ・暑さに弱くなる)
睡眠リズム       メラトニン分泌の調節障害→入眠困難・早朝覚醒
摂食・代謝       レプチン・グレリン感受性の変化→食欲異常・体重増減
ストレス応答     視床下部-下垂体-副腎系(HPA軸)の調整能力が低下

【3. 臨床的影響】
• ホルモン連鎖の乱れ(例:下垂体・甲状腺・副腎・性腺機能低下)
• 自律神経の乱れ(不整脈・便通異常・睡眠障害)
• 概日リズム障害(日中の眠気、夜間不眠)
• 慢性炎症の促進(免疫老化と関連)

【4. ミトコンドリアとの関係】
視床下部のニューロンにはミトコンドリアが豊富に存在しており、加齢によるミトコンドリア機能低下がホルモン調整機能や自律神経の劣化に直結します。
• 活性酸素(ROS)の蓄積
• 神経細胞のエネルギー代謝の低下
• 視床下部の「炎症性老化(inflammaging)」が進行

【5. 対応と予防アプローチ】
方法                         効果
生活リズムの最適化     朝日を浴びる、規則的な睡眠と食事
ミトコンドリア活性化      NMN・5-ALA・運動・水素吸入など
抗炎症・抗酸化食生活   DHA、ポリフェノール、抗酸化ビタミン(C・E)など
ストレスケア                HPA軸を整え、視床下部への負荷軽減

【まとめ】
視床下部は「老化の起点」とも言える重要な中枢です。その機能低下は、ホルモンバランス、自律神経、睡眠、体温、代謝といった全身の恒常性に波及します。視床下部の健全さを保つことが、老化のスピードを緩やかにする鍵となります。

Author:

武本 重毅

聚楽内科クリニックの院長、医学博士。