日本の国民皆保険の始まりと今
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日本の「国民皆保険制度」は、すべての国民が何らかの公的医療保険に加入することを義務づける制度であり、1961年に実現されました。以下、その歴史と現在の姿をわかりやすく解説します。
国民皆保険の始まり(戦後〜1961年)
戦前〜戦後直後
• 1922年:「健康保険法」制定 → 主に工場労働者などを対象に開始(1938年から強制加入)。
• 1938年:「国民健康保険法」制定 → 自営業者・農民も対象に含めるが、任意加入。
第二次世界大戦後
• 社会保障制度の整備が進められる中で、「医療は国家が保障すべき」という考えが強まる。
• 1958年:国民健康保険法が改正され、市町村が運営主体となり、未加入者にも加入を義務化できる道が整う。
1961年:「国民皆保険制度」実現
• すべての国民が何らかの医療保険(被用者保険 or 国民健康保険)に強制加入。
• 同年には「国民皆年金制度」も同時にスタート。
現在の国民皆保険制度(2025年現在)
保険のしくみ
日本の医療保険制度は、大きく分けて2種類あります:
区分 対象者 主な制度
被用者保険 会社員・公務員 健康保険(協会けんぽ、組合健保など)
国民健康保険 自営業・無職・年金生活者等 国保(市区町村が運営)
特徴
• 誰でも保険証を持っており、原則として医療費の3割負担(75歳以上は原則1〜3割)。
• 高額療養費制度、出産育児一時金など、負担軽減の仕組みあり。
• 全国どこでも自由に医療機関を受診可能(フリーアクセス)。
現代の課題
1. 高齢化による医療費増大
→ 国の医療費は年間約45兆円(2023年)、うち75歳以上が約36%。
2. 少子化と保険財政のバランス崩壊
→ 働く世代の保険料負担が年々重くなっている。
3. フリーアクセスの見直し議論
→ 医療資源の偏在やコンビニ受診の問題が顕在化。
4. 医師偏在・地域医療の崩壊リスク
→ 地域によっては医師不足・病院縮小が進行中。
今後の方向性
• かかりつけ医制度の強化(ゲートキーパー機能)
• オンライン診療の推進と効率化
• 予防医療(健康寿命の延伸)への投資
• AIやデジタル技術の活用(マイナ保険証など)