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院長日記

日本における生産年齢人口の変化と国民皆保険のあり方について

ここでは、日本における生産年齢人口の変化と、それが与える影響としての国民皆保険制度のあり方の変化と課題について、社会保障政策の観点から詳しく解説いたします。

 生産年齢人口の変化(15~64歳)

 推移と予測(総務省データより)
年次                    生産年齢人口(15~64歳)  全人口に占める割合
1995年(ピーク)  約8,700万人        約69%
2020年               約7,500万人        約59%
2025年(見込)   約7,300万人        約58%
2040年(推計)   約6,000万人        約54%未満
2060年(推計)   約5,000万人        約50%未満

つまり:
→ 働く人が減り、支えられる人(高齢者・子ども)が増える社会に突入しています。

 国民皆保険制度のあり方とその影響

 国民皆保険制度とは?
1961年にスタート。
→ すべての国民が何らかの公的医療保険に加入することを義務づけ、どこでも医療を受けられる制度。

 生産年齢人口の減少が国民皆保険に与える影響
1. 保険料収入の減少
• 働く人(保険料を納める人)が減る
• 75歳以上の高齢者の医療費は多く、保険支出は増える
• 結果:制度維持のために若年層の保険料が上昇傾向

2. 医療費の増加
• 医療費総額:2023年時点で 約45兆円(過去最高)
• その約36%が後期高齢者(75歳以上)
• 年々、財源確保が厳しくなる

3. フリーアクセスの見直し議論
• 現状:誰でも自由に医療機関を受診できる
• 課題:軽症での外来受診・重複受診・医療資源の浪費
• 対応:「かかりつけ医制度」の整備や初診時選定療養費の導入

4. 地域格差の拡大
• 医師や医療機関が都市に集中
• 地方では「医療空白地域」「産科・小児科不足」などが顕在化
• 解決策:地域包括ケアシステムと遠隔医療・AI活用

 今後求められる国民皆保険の「あり方」
項目                                  必要な方向性
① 財源の持続性             ・高齢者自己負担の見直し.  ・高額療養費制度の調整.  ・予防医療の強化
② 給付の効率化             ・ICT化による無駄の削減.  ・過剰検査.  ・過剰投薬の是正
③ 健康寿命の延伸         ・生活習慣病予防の保険点数加算.  ・運動・栄養・禁煙指導の強化
④ 医療提供体制の再構築 ・「病院完結型」から「地域完結型」へ.  ・診療所・在宅医療の活用促進
⑤ 多世代の共助             ・高齢者の社会参加.  ・世代間の負担バランスの公平性の議論

 まとめ:人口構造の変化に合わせた制度改革が不可避
視点                       キーワード
社会構造の変化       少子高齢化、人口減少、働く世代の負担増
医療制度の未来       予防重視・健康経営・地域完結型医療
国民皆保険の役割    「病気になってから治す」から「健康を保つ」制度へ

Author:

武本 重毅

聚楽内科クリニックの院長、医学博士。