国民皆保険と開業医収入との関係について
日本の「国民皆保険制度」と「開業医の収入」は、診療報酬制度を通じて密接に結びついています。この制度は、開業医の経営・収入の根幹にあたるものであり、以下のような関係で成り立っています。
国民皆保険と開業医の収入の基本構造
保険診療による報酬=「診療報酬制度」
• 国民皆保険制度により、すべての国民が保険証を持っている。
• 患者は医療機関(開業医を含む)を自由に受診できる(フリーアクセス)。
• 医療機関(=開業医)は、患者の窓口負担(1〜3割)+ 保険者からの診療報酬(7〜9割)で収入を得る。
診療報酬の仕組み
項目 内容
診療報酬点数表 国が定めた「点数表」に基づき、診療行為に点数が付けられる(1点=10円)
月次請求(レセプト) 保険者(協会けんぽ、国保など)に診療報酬を請求する「レセプト」が収入の柱
政府のコントロール 診療報酬は2年に1回、政府が改定(医療費抑制政策の影響を受けやすい)
開業医の主な収入源
種類 収入割合の目安 内容
保険診療報酬 約8〜9割(多くの一般診療所) 外来診療、検査、処方、在宅医療などの診療報酬
自由診療収入 約1〜2割(施設により変動) ワクチン、自費健診、美容医療、アンチエイジング等
その他(物販等) ごく一部 サプリ・健康食品、医療機器販売など
国民皆保険制度の影響:メリットと制約
メリット
項目 内容
安定的な患者数 保険証があれば誰でも受診できるため、一定の患者数が確保できる
医療費の未回収が少ない 窓口負担は少なく、残りは保険から支払われるため、経営が安定しやすい
高齢化社会との親和性 慢性疾患や定期診察の需要が高く、安定した収入源になりやすい
デメリット/制約
項目 内容
報酬単価の制約 点数表に縛られ、高度な医療でも低単価になりがち
行政の統制 診療報酬改定で収入が下がるリスク(例:再診料引き下げなど)
医療の効率化圧力 長時間診察や検査には「点数がつかない」こともあり、採算が取りにくい
書類業務・レセプト負担 審査・返戻などの煩雑さ、事務作業の増加
収入の平均と動向(参考)
• 日本医師会や厚労省の調査によると、開業医(無床診療所)の平均年収は約2,000〜2,500万円(変動あり)。
• ただし、診療科や立地によって大きな差あり。都市部の競争激化や保険点数の低下で、実質所得は減少傾向とも。
今後の展望
項目 内容
自由診療の導入 アンチエイジング、再生医療、統合医療などで収益多様化を図る医師も増加
かかりつけ医機能強化 「包括報酬制」導入や、慢性疾患管理料などの新設が議論されている
ICT活用 オンライン診療・電子カルテ・遠隔モニタリングによる業務効率化と収益化