第1回 老化は見えない「三つの敵(破壊者)」から始まる
「年齢とともに疲れやすくなった」「昔より体のキレが悪い」——それ、もしかすると“老化の因子”が体にたまってきているのかもしれません。最新の研究では、老化の背景に『酸化』『炎症』『糖化』という3つのプロセスが関与していることがわかってきました。まずはこの“見えない三因子”の正体に迫ります。
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老化は避けられない自然現象——そう信じて疑わなかった人も多いのではないでしょうか。しかし、ここ10年の生物学や分子医学の進展により、「老化はコントロールできる現象である」という考え方が注目されるようになってきました。
その中でも、老化を加速させる“3つの見えない敵”が明らかになっています。それが「酸化」「炎症」「糖化」です。この三因子は、それぞれが単独で体に悪影響を与えるだけでなく、互いに悪循環を作り出して老化を強めていくという特徴を持っています。
たとえば、酸化とは、体内に発生する「活性酸素(ROS)」によって細胞がダメージを受ける現象です。これは鉄が錆びるのと同じようなもので、人の体も内側から“錆びて”いきます。次に炎症。これは、体が何らかの刺激に反応して免疫システムが活性化する状態ですが、年齢を重ねるとこの反応が慢性化し、体に負担をかけ続けるようになります。そして糖化。これは余分な糖とタンパク質が結びついてできるAGEs(終末糖化産物)によって、皮膚や血管、骨の弾力性が失われていく現象です。
この三つの老化因子は、まさに「体の静かな破壊者」と言える存在です。
さらに恐ろしいのは、これらが互いに影響し合うという点です。活性酸素によって炎症が起こり、炎症によって糖代謝が乱れ、糖化が進むことでさらに活性酸素が発生する。まるでぐるぐると回る負のスパイラル——これが“老化三因子ループ”です。
このループが長年続けばどうなるか? 答えは明らかです。細胞は本来の機能を失い、組織は劣化し、病気のリスクが高まっていく——そして見た目にも「老けて」見えるようになってしまうのです。
では、この三因子をどうやって防ぎ、抑えていけばよいのでしょうか? それにはまず、どこから老化が始まっているのかを“見える化”することが第一歩になります。次回は、この老化の三因子がどのようにして体内で発生するのか、その中心的役割を果たす「ミトコンドリア」の働きについて詳しく解説します。
次回予告:
「エネルギーの工場」であると同時に、「老化の震源地」でもあるミトコンドリア。その驚くべき役割とは?