Director's blog
院長日記

【第3回】Mito Rising応用編:「がんとMito Rising」

“エネルギーの暴走”ががんを生む?──ミトコンドリアとワールブルグ効果の真実

がん治療といえば、手術・放射線・抗がん剤が一般的ですが、実は細胞のエネルギー代謝異常が発がんの出発点であることをご存知でしょうか?
今回は、「がん細胞のエネルギーの暴走」とミトコンドリアの関係に焦点を当てながら、“Mito Rising”が果たしうる役割について掘り下げてみましょう。

がん細胞は“糖が大好き”──ワールブルグ効果とは

正常な細胞は酸素を使ってミトコンドリアで効率よくATP(エネルギー)を作りますが、がん細胞は酸素があってもあえて“解糖系”だけでATPを作るという異常な代謝を行います。これを「ワールブルグ効果」と呼びます。

この現象には、
• 酸化的リン酸化の低下(=ミトコンドリア機能の低下)
• 酸性環境や乳酸の蓄積
などが関与し、がん細胞が増殖しやすい環境を自ら作り出しているのです。

ミトコンドリア機能低下と酸化ストレスが引き金に

ミトコンドリアは、ATPを作る過程で活性酸素(ROS)も生み出します。本来はこれを解毒・制御する機能もあるのですが、加齢・ストレス・環境因子によってミト機能が低下すると、
• DNA損傷
• 慢性炎症
• 免疫異常

などを引き起こし、それががん化の引き金になる可能性があります。つまり、ミトコンドリアの機能低下は、がんの“土壌”をつくるのです。

Mito Risingで“代謝を再教育”できるか?

私が提唱するアンチエイジング3本の矢®の中でも、がん予防・補完医療として注目しているのが以下の3点です:

5-ALA(5-アミノレブリン酸)

→ ミトコンドリア内の「複合体Ⅳ」を活性化し、酸素を使ったエネルギー代謝を再起動させます。細胞の呼吸力を高め、“解糖依存”からの脱却を促します。

水素吸入療法(H₂)

→ ミトコンドリアで発生する悪玉活性酸素(OHラジカル)を除去し、炎症・DNA損傷を抑制。副作用も少なく、がん治療中の疲労感や倦怠感の改善にも有効とされます。

低糖質+高ミトコンドリア栄養

→ 糖質中心の食事から、脂肪酸・ケトン体を利用するミトコンドリア優位の代謝へ。エネルギーの“質”を変える食事療法も、補完医療の一環として重要です。

“Mito Rising”はがん治療の主役になれるか?

現時点では、Mito Risingはあくまで「補完的アプローチ」であり、手術・化学療法・放射線といった標準治療を否定するものではありません。しかし、
• 疲労・食欲不振・慢性炎症の改善
• 副作用軽減や生活の質(QOL)向上
• がんの再発・進行リスクを下げる可能性

などの観点で、“Mito Rising”は多くのがんサバイバーにとっての希望となる可能性を秘めています。

まとめ──がんは「代謝の病気」でもある

がん細胞は、エネルギー代謝のゆがみから生まれる“細胞の暴走”。
ミトコンドリアの再活性化は、がんの成長に必要な環境を整え直すという視点から、予防・再発防止・QOL向上に向けた補完医療の柱となり得るでしょう。

次回は、「心臓は“ミトコンドリアが命”──心不全・動悸・冷えとATP不足の関係」についてお届けします。

Author:

武本 重毅

聚楽内科クリニックの院長、医学博士。