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院長日記

慢性疲労症候群・長期COVIDと「筋肉の疲れ」

武本 重毅

カテゴリー: 

なぜこんなに疲れてしまうのか?

慢性疲労症候群(ME/CFS)や長期COVID(ロングCOVID)では、
「休んでも取れない強い疲労感」「ちょっと動いただけでぐったりする」
といった症状がよく見られます。

最近の研究で、こうした症状の原因が 筋肉とその中のミトコンドリア(エネルギー工場) にあることが少しずつわかってきました。

 

🧪 研究でわかったこと

スペインの研究チームは、健康な細胞から作った「人工の筋肉」に患者さんの血液成分(血清)を加えて、その変化を調べました。

🔹 短時間の影響(2日間)

  • 筋肉の力が弱まる
  • エネルギーを作る仕組み(ミトコンドリア)が乱れる

🔹 長時間の影響(4~6日間)

  • 筋肉がどんどん細くなる(萎縮)
  • ミトコンドリアが壊れてバラバラになっていく

 

💡 何が見えてきたか?

  • 筋肉は最初、がんばって「代謝を上げて」対応します。
  • でも長く続くと無理がたたり、筋肉そのものが弱ってしまいます。
  • これは、患者さんが感じる 「すぐに疲れる」「動いたあとに何日も疲労が残る」 という症状とよく一致します。

 

📌 この研究の意味

「疲れは気のせい」「動かないから筋肉が弱るだけ」
――これまでそう誤解されることも多かった慢性疲労や長期COVID。

今回の研究は、本当に筋肉の中で代謝やミトコンドリアの問題が起きている ことを証明しました。

これは、将来の治療法を探すための大きな手がかりになります。

 

  • 元気な筋肉:工場がしっかり動き、エネルギーを作る
  • 患者さんの筋肉:工場はフル稼働するけれど途中で壊れてしまい、力が出せなくなる

 

🔗 参考論文:
Sheeza Mughal et al. Biofabrication (2025年8月発表)
DOI: 10.1088/1758-5090/adf66c

Author:

武本 重毅

聚楽内科クリニックの院長、医学博士。