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院長日記

「ミトコンドリア機能を改善(回復)する音楽」に関する最新の研究

武本 重毅
  1. ミトコンドリアは音や音楽を感知する
  • ミトコンドリアは単なる「エネルギー工場」ではなく、音や振動を“エネルギーポータル”として感知・変換する能力を持つと報告されています。
  • 特定の音楽刺激は、ATP産生や細胞内のバイオエネルギーに有意な影響を及ぼすことが確認されています。
  • 「音の種類・周波数」によって、ミトコンドリアが活性化するか、逆にストレスが増すかが異なることも示唆されています。

 

  1. 音楽療法と脳・ミトコンドリア
  • 音楽療法は脳の前頭前野—海馬—扁桃体回路(PFC-Hip-Amy回路)を介して作用し、気分・認知機能・炎症抑制に影響します。その過程でグリア細胞やミトコンドリアが直接的なターゲットになる可能性が指摘されています。
  • ミトコンドリアのストレス応答(UPRmt)や炎症制御と音楽の関係は、今後の研究テーマですが、少なくとも「音楽が細胞レベルの代謝や酸化ストレスに影響を与える」証拠が出始めています。

 

  1. 科学的に注目されている具体的な音楽
  • モーツァルトのソナタK448
    • いわゆる「モーツァルト効果」。空間認知能力や脳波(α波増加、リラックス状態)を改善することが知られています。
    • てんかん患者で発作が減少した報告や、認知機能改善が見られた研究があります。
  • シンギングボウル瞑想やマントラ
    • チベットのシンギングボウルやインドのマントラは、深いα波・θ波を誘導し、ミトコンドリアの酸化ストレス低減やATP産生効率改善と関わる可能性があるとされます。
  • ゆったりしたテンポ(60〜80 bpm)のクラシックや自然音
    • 副交感神経優位に働き、炎症性サイトカインを低下させる報告があります。

 

  1. 「音楽 × ミトコンドリア」臨床応用の方向性
  • ミトコンドリア障害を伴う神経変性疾患(認知症、パーキンソン病、うつ病など)において、音楽療法は低コスト・副作用なしの補助的治療として期待されています。
  • 研究段階ですが、音楽の種類(周波数・テンポ・楽器)を調整することで、個別化された「ミトコンドリア音楽療法」が将来的に確立する可能性があります。

 

まとめると、現在科学的に「ミトコンドリア機能改善」との関連が報告されている音楽は:

  • モーツァルト(特にソナタK448)
  • シンギングボウル瞑想音
  • マントラやチャンティング
  • ゆったりとしたクラシック・自然音

が中心です。

Author:

武本 重毅

聚楽内科クリニックの院長、医学博士。