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東洋経済オンラインの記事を読んで
ミトコンドリアから読み解く「老化と再生」――記事と新書をつなぐ視点
「朝から疲れている」「やる気が出ない」――。現代人の多くが抱える慢性的な疲労感。単なる加齢や生活習慣の問題だと思われがちですが、細胞の奥深くにある“ミトコンドリア”の機能低下が大きく関わっている可能性があります。
2025年9月に東洋経済オンラインに掲載された記事は、アメリカの医師エリック・ネプーティ著『健康を害するすべてのもの〜ビカミングバイオリミットレス〜』(日本経営センター刊)の抜粋版でした。この本の中でネプーティは、私たちの健康を蝕む「見えない要因」に光を当てています。感染症や環境毒素、腸内環境の乱れ、慢性的なストレス――それらが細胞の発電所であるミトコンドリアを直接的・間接的に傷つけ、エネルギー産生の低下を招くのです。
記事が伝える「エネルギー不足症候群」
ネプーティは、ポストコロナ時代に広がる「慢性的なエネルギー不足」こそが現代人の大きな課題だと指摘します。とくに新型コロナウイルス感染後に見られる「長期コロナ症候群」では、ミトコンドリアが損傷を受け、慢性疲労や筋力低下を引き起こすことが研究で示されています。
加えて、腸内細菌のバランスの乱れは全身性の炎症を引き起こし、遺伝子発現の異常や環境毒素の影響も相まって、ミトコンドリアの働きを妨げます。さらに、慢性的なストレスは交感神経を過剰に刺激し、ストレスホルモンの上昇を通じてミトコンドリアの新生を阻害することが知られています。
記事では、こうした要因が重なり合うことで「エネルギー不足症候群」が社会全体に広がっていると説明されていました。
解決へのアプローチ
ネプーティが提案する解決策は多岐にわたります。
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運動と呼吸法:筋肉を動かし、深く呼吸することで新たなミトコンドリアが生まれ、全身のエネルギー効率が高まる。
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腸内環境の改善:プロバイオティクスや食生活の工夫により炎症を抑え、ミトコンドリアを守る。
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ペプチド療法や脳のバランス調整:先端技術によって細胞修復やストレス軽減を図る。
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断食やマインドフルネス:酸化ストレスを減らし、エネルギー調整力を高める習慣。
一方で記事では、エナジードリンクなど即効性をうたう製品への依存は危険であり、長期的には疲労や健康悪化を助長することも警告しています。
私の新書が伝えたいこと
この視点と重ね合わせていただきたいのが、私の新書『ミトコンドリアから読み解く老化と再生』(ワニブックス新書)です。
本書では、ミトコンドリア研究の最新知見と、私自身が臨床医として取り組んできた「老化を遅らせ、さらには細胞レベルで再生させる可能性」を提示しました。
とくに強調しているのは、
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老化は一方通行ではなく、可逆的なプロセスを含んでいること
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ミトコンドリアを元気にすることが、心身の若さを取り戻す鍵であること
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NMN、5-ALA、水素吸入といったアプローチが臨床現場で手応えを示していること
です。つまり、ネプーティが「健康を害する要因」を指摘し排除する方向から問題を解決しようとするのに対し、私は「ミトコンドリアの再生力を高める」方向から老化に挑んでいるのです。
ネプーティと私の視点の融合
両者の立場は異なるようでいて、実は相補的です。
ネプーティの言う「見えない敵」を避けることは、ミトコンドリアを守るうえで不可欠です。一方で、すでにダメージを受けた細胞を再生させ、失われた活力を取り戻すには、私が本書で紹介したようなミトコンドリア再生の戦略が必要です。
守ることと、蘇らせること。両輪を組み合わせることで、はじめて「制限なき生体(BioLimitless)」、そして「老化からの再生」が現実味を帯びてくるのです。
おわりに
東洋経済オンラインに掲載された記事は、ネプーティの著書からの抜粋でした。つまり、海外の医師が訴える「健康を害するもの」を知る機会であり、同時に日本の読者にとっては、自身の生活を見直すヒントとなるものでした。
そこに私の新書『ミトコンドリアから読み解く老化と再生』を重ね合わせることで、読者は「なぜ疲れるのか」という問いに答えるだけでなく、「どうすれば再び若返るのか」という希望の道筋を得られるはずです。
老化は運命ではありません。ミトコンドリアを正しく理解し、守り、再生させることで、誰もが細胞レベルの若返りを実感できる時代が近づいています。