第X章 第1節「3つの分子が補完し合う理由」
第1節|3つの分子が補完し合う理由 ― NMN × 5-ALA × リチウムの“ミトコンドリア協奏曲” ―
「1つでは足りない」ミトコンドリア活性の現実
私たちが「老化」や「認知機能の低下」に直面するとき、その背景にはミトコンドリアの複合的な機能低下が存在します。
- NAD⁺の減少 → 代謝系が機能不全に
- 電子伝達系の低下 → ATPの産生効率が悪化
- 酸化ストレス・Ca²⁺異常 → ミトコンドリアが傷つく
このように、ミトコンドリアの老化は一つの分子で対処しきれない多面的な問題を含んでいます。
したがって、相補的に作用する複数の戦略を組み合わせることが、本質的な再活性化につながるのです。
各分子の作用領域を整理すると… 以下の表は、3つの分子の主な作用をミトコンドリア機能の“段階”ごとに分類したものです。
ミトコンドリア機能 主な課題 補完する分子
代謝制御・遺伝子応答 NAD⁺枯渇、SIRT低下 NMN
電子伝達・ATP産生 ヘム不足、複合体不全 5-ALA
恒常性維持 酸化ストレス、Ca²⁺乱調、炎症 リチウム
それぞれの分子は独立して作用するだけでなく、他の分子によって強化される“共鳴”関係を形成しています。
連携の例:SIRT1 × ATP × 炎症制御
- NMN によって NAD⁺レベルが高まると、SIRT1/3 が活性化し、
DNA修復・抗炎症遺伝子の発現・ミトコンドリア新生が促進されます。
- しかしこの“指令”が機能するためには、ATPというエネルギーが十分にあることが前提条件。
ここで 5-ALA による電子伝達系の強化が支えとなります。
- さらに、ミトコンドリアが過剰なCa²⁺やROSにさらされると損傷しやすくなりますが、
それを防ぐのが
リチウム の恒常性制御(GSK-3β阻害、抗酸化作用)です。
「代謝」「出力」「安定性」それぞれの楽器が奏でるハーモニー
NMN・5-ALA・リチウムは、それぞれがミトコンドリア機能の
- エンジン設計(代謝制御)
- 発電力強化(ATP生産)
- 安全装置(酸化・炎症防御)
という異なるパートを担当しています。
1人の奏者が全てを担当することはできませんが、3人がチームになれば、
脳と細胞のエネルギー系は、より豊かで滑らかに“再生”のシンフォニーを奏でることができるのです。
次節への導入
次節では、これら3者が脳内のシナプス・神経細胞レベルでどのように協調して働くのか、
とくに記憶中枢である海馬のミトコンドリアネットワークにおける作用を解き明かしていきます。

