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クリニックからのお知らせ

医療制度の老化と再生

聚楽内科クリニック

― 生命の仕組みから見える、社会の若返り ―

 

はじめに:からだと同じように、社会も老いる

私たちの体は、日々少しずつ老化しています。
細胞の中ではミトコンドリアが疲れ、修復の力が追いつかなくなる。
それと同じように、社会の仕組み(制度)も老化する――この事実に気づく人はまだ多くありません。

医療制度もまた、誕生から数十年を経て「慢性疲労状態」にあります。
目的は“命を守る”ことだったのに、いまは形式や手続きに縛られ、現場がエネルギーを失っているのです。
このコラムでは、からだの老化と制度の老化を重ねながら、私たちがどのように再生の道を歩めるのかを考えます。

 

医療制度が「老化」しているサイン

老化は見た目だけでなく、「柔軟性を失う」ことから始まります。
いまの医療制度も、まさにその段階にあります。

  • 病床はあっても医療者が足りない
  • 現場は診療よりも書類や報告に追われている
  • 新しい取り組みをしようとしても、規制の壁にぶつかる
  • 予算や評価制度が時代に合わず、意欲が削がれる

これらはまるで、DNA損傷を修復できなくなった細胞のような状態
外見は保たれていても、内部の代謝は停滞し、酸化ストレス(制度疲労)が蓄積していくのです。

 

制度疲労のメカニズム ―「代謝の滞り」

生命体が生き続けるには、「古いものを壊し、新しいものを作る」という代謝が欠かせません。
しかし、制度は一度できあがると壊すことを恐れ、修復ばかりを繰り返すようになります。

たとえば、問題が起きるたびに新しい規制が追加される。
それを守るための手続きが増え、現場の自由が奪われる。
人材が疲弊し、やがて現場離れが起こる。
その穴を埋めるために、また新しいルールができる――。

この循環は、まさに「老化した細胞が老化細胞を増やす連鎖」に似ています。
制度もまた、エネルギーを消費しながら“自分自身を保つための仕組み”に囚われてしまうのです。

 

再生の鍵は、「生命の仕組み」に学ぶこと

では、どうすれば再生できるのでしょうか?
ヒントは、私たちの体の中にあります。

ミトコンドリアは、古くなった部分を自ら分解し、新しい構造を再構築する「自律再生システム」を持っています。
自然界では、枯れ葉が落ちて土に還り、次の命を育む。
つまり、“壊すこと”は悪ではなく、“次を生む準備”なのです。

制度も同じです。
中央集権的なコントロールではなく、地域ごとの自律と連携(分散型ネットワーク)に進化することで、新しい命を取り戻せます。
医療が持つ「治す」力に加え、「再生する」力を社会全体に広げる――それが、これからの医療制度の姿だと思います。

 

 

 

現場からの再生 ― 聚楽内科クリニックの試み

再生は、国の上層部からだけでは始まりません。
現場から生まれる“再生の芽”があります。

聚楽内科クリニックでは、

  • 「測定 → 介入 → 再評価」の循環モデル(MitoQureサイクル)
  • 医療 × 食 × 教育 × アートを融合した健康文化の発信(Mito Café, 医食同源キッチン)
  • 「アンチエイジング3本の矢®」による体の再生支援

これらは単なる医療技術の導入ではなく、“制度の再生”を体現する小さな実験場です。
現場がエネルギーを取り戻せば、制度全体も少しずつ変わっていく。
それが“ボトムアップ型の再生医療”だと私は考えています。

 

未来へのメッセージ:制度も生命体である

医療制度も、社会も、人間の体と同じように“生命体”です。
だからこそ、老化を止めることはできなくても、再生の力を呼び覚ますことはできる

壊すことを恐れず、柔軟に形を変える。
過去の仕組みにしがみつくより、次の命を育てる。
それが「医療制度のアンチエイジング」です。

老いた制度に、新しいミトコンドリアを。
それは、私たち一人ひとりの意識の中から始まる改革です。

 

結びに

医療制度の再生とは、国や行政だけの話ではありません。
地域のクリニック、患者さん、家族、教育現場――すべてがつながり、互いを支え合うこと。
その共生の中で、医療は再び“生きたシステム”に戻っていくのです。

老化した細胞を修復するように、
社会もまた、治る力を持っている。

その希望を信じて、私は今日も診療室で「再生の芽」を探し続けています。

— Dr. Shiggekky(聚楽内科クリニック 院長)