NMN/NRサプリ:臨床応用の利点と注意点
【利点:医学的に期待できるポイント】
1️⃣ NAD⁺レベルを安定して上昇させる
- NMNもNRも、経口摂取で血中NAD⁺を確実に引き上げることが複数の臨床試験で確認されている。
- 特に 高齢者・慢性炎症・代謝疾患でNAD⁺低下が顕著。
ミトコンドリアのエネルギー産生を底上げする“土台作り”として有効。
2️⃣ ミトコンドリア機能の改善
- NAD⁺が増えると SIRT1/SIRT3 などの酵素が活性化し、
ミトコンドリアの修復・再編成(ミトホジー)が促進される。 - 筋肉・肝臓・脳でのミトコンドリア改善が示唆。
疲労軽減・代謝改善・認知予防などの基礎を支える。
3️⃣ 耐糖能・脂質代謝の改善(軽度例)
- 前糖尿病・肥満患者で、
インスリン感受性改善・肝脂肪軽減を示すデータが存在。 - NRで肝臓の脂質代謝が改善した報告あり。
糖尿病予備軍・脂肪肝の改善に有望。
4️⃣ 血管・神経の保護作用
- NAD⁺は神経修復酵素(PARP・SARM1)のバランスに関わるため、
末梢神経障害・脳機能の保護が示唆。 - 血管内皮機能を改善する可能性も。
“老化炎症(inflammaging)”の抑制と相性が良い。
5️⃣ 安全性が比較的高い
- NMN・NRはヒト試験でも大きな有害事象が少ない。
- 既存ビタミンB3よりも副作用が軽度で、長期利用の研究が進行中。
高齢者でも導入を検討しやすいサプリ。
【注意点:クリニックで必ず説明したいポイント】
1️⃣ “がん領域”は慎重(両義的作用)
総説が最も強調している点。
- がん細胞も NAD⁺ を大量に利用して増殖する。
- 前駆体補充が腫瘍増殖を助ける可能性が完全には否定できない。
- 一方で、ミトコンドリア改善による抗腫瘍免疫の強化という逆の作用もある。
結論:がん患者・再発リスクが高い患者には必ず医師判断が必要。
2️⃣ NAM(ナイアシンアミド)過剰は逆効果
NMN・NRは基本的に安全だが、代謝の過程で生じる NAM が
過剰になるとSIRT活性の妨げになる(論文で明記)。
特に市販サプリの「高容量NAM入り」は避けるべき。
3️⃣ 肝機能に注意(NR・NAMの代謝経路)
- 高用量では肝臓への負担が指摘されている。
- NRは比較的安全だが、脂肪肝や肝障害がある人は慎重に。
肝機能検査(AST/ALT/γ-GTP)と併用が望ましい。
4️⃣ 相互作用:抗がん剤・免疫治療との関係
- 一部の治療では、細胞のDNA修復が強まると薬剤効果を弱める可能性。
- PARP阻害薬などとの同時使用は要注意。
抗がん剤治療中の患者には“主治医許可”を必須に。
5️⃣ 「NAD⁺を上げればすべて解決」ではない
総説の核心部分。
- NAD⁺は“上げれば上げるほど良い”わけではない。
- 高すぎると 代謝ストレス・NADサイクル負荷を起こす可能性。
- 効果は人によってばらつきがある。
適量・目的に応じた設計が重要。
Dr.Shiggekkyの“3本の矢”のような総合アプローチが理想的。
まとめ(臨床現場での最適な位置づけ)
|
項目 |
NMN/NRの評価 |
|
エネルギー改善 |
◎ 強い |
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ミトコンドリア機能 |
◎ 期待大 |
|
代謝(糖・脂質) |
○ 中~強 |
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認知・神経 |
○ 期待あり |
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老化炎症 |
○ 抑制作用 |
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安全性 |
◎ 比較的高い |
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がんとの関連 |
△ 慎重に |
Dr. Shiggekky式 臨床判断アルゴリズム(簡易版)
◆ 推奨(◎)
- 40歳以上の慢性疲労
- メタボ・糖代謝異常・脂肪肝
- 睡眠質の低下
- 早期老化(エピクロック®高齢化)
- ミトコンドリア低下が疑われるケース
◆ 慎重(△)
- 活動性のがん
- 抗がん剤・PARP阻害薬使用中
- 肝機能障害
- NAM高容量サプリを併用している人

