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院長日記

NAD⁺(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)のはたらき

武本 重毅

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  1. エネルギー代謝の中心プレイヤー

NAD⁺は、私たちの細胞の中で「電子の運び屋」として働く補酵素です。
ミトコンドリア内で、糖・脂肪・アミノ酸を燃やしてATP(エネルギー)を作るとき、NAD⁺は電子を受け取り、NADHという形になります。

  • 解糖系 → クエン酸回路(TCAサイクル) → 電子伝達系
     この一連の流れでNAD⁺が電子を運び、最終的にATP産生を助けます。
     NAD⁺ ⇄ NADH のサイクルが生命活動の原動力
  1. 老化とNAD⁺の関係

加齢とともに体内のNAD⁺濃度は20〜50%ほど減少します。
これが、ミトコンドリア機能の低下や代謝の鈍化、慢性炎症の一因と考えられています。

NAD⁺が減ると:

  • ミトコンドリアのエネルギー産生が落ちる
  • DNA修復が遅れる
  • サーチュイン遺伝子(長寿遺伝子)の活性が低下する
  • 免疫細胞の代謝が乱れ、炎症が続きやすくなる

これらが「老化の加速」や「慢性疾患の進行」に直結します。

  1. サーチュイン(SIRT)との連携

NAD⁺はサーチュイン酵素(SIRT1〜SIRT7)の働きに欠かせません。
サーチュインは「エピジェネティックな若返り制御」を行う酵素群で、NAD⁺が燃料のように使われます。

主な働き:

  • DNA修復(SIRT1, SIRT6)
  • ミトコンドリア新生(SIRT3, SIRT5)
  • 炎症抑制・代謝制御(SIRT1, SIRT2)
  • 神経保護(SIRT1, SIRT7)

つまり、NAD⁺が減るとサーチュインが働けなくなり、細胞の若返りシステムが停止してしまいます。

  1. NAD⁺を増やす方法

体内でNAD⁺を補うために、以下のアプローチが知られています。

方法

メカニズム

補足

NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)

NAD⁺の直接前駆体

細胞内で速やかにNAD⁺へ変換

NR(ニコチンアミドリボシド)

NAD⁺の代謝前駆体

サプリメントとして使用例あり

5-ALA + 鉄(ALA-SDH経路)

ミトコンドリア代謝を活性化

NAD⁺再生を助ける

断食・カロリー制限

NAMPT酵素を誘導

NAD⁺再生系を自然に刺激

水素吸入・抗酸化戦略

NADH酸化を促進

NAD⁺/NADHバランスを維持

Dr. Shiggekkyの提唱する「アンチエイジング3本の矢®
(NMN+5-ALA+水素)は、このNAD⁺サイクルを三方向から支える設計です。

  1. まとめ

機能

役割

エネルギー産生

ATP生成の鍵となる電子運搬体

DNA修復

PARPやSIRTの補酵素として機能

老化抑制

サーチュイン活性化を通じてエピジェネティック制御

抗炎症作用

NF-κB抑制などで慢性炎症を防ぐ

神経・代謝保護

ミトコンドリア維持による細胞防御

 

Author:

武本 重毅

聚楽内科クリニックの院長、医学博士。