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院長日記

5-ALAリン酸塩(5-アミノレブリン酸リン酸塩)のはたらき

武本 重毅

カテゴリー: 

— Dr. Shiggekkyの「アンチエイジング3本の矢®」の中核成分として —

  1. 基本構造と体内での役割

5-ALA(5-Aminolevulinic Acid)は、体内でミトコンドリアの中で自然に合成されるアミノ酸様物質です。
そのリン酸塩(5-ALAリン酸塩)は、安定化・吸収性を高めた医薬・サプリメント形態です。

生成の起点
 グリシン(アミノ酸)+コハク酸(TCAサイクルの中間体) → ミトコンドリア内でALA合成酵素(ALAS)により生成。
 「生命エネルギーの源をつくる第一歩」。

  1. ミトコンドリアでの働き

5-ALAはミトコンドリア内でヘム(heme)合成経路の最初の物質。
ヘムは、酸素と電子を運ぶ重要な分子で、エネルギー代謝に欠かせません。

5-ALA → ポルフィリン → ヘム → シトクロム(電子伝達系)

つまり:

「5-ALAがあるから、シトクロムが作られ、ATPが生まれる。」

シトクロム(cytochrome)は電子伝達系の主役であり、ATP産生(酸化的リン酸化)の最終ステップで働く。
結果として、5-ALAはNAD⁺/NADHバランスを整え、エネルギー効率を向上
させます。

  1. 代謝活性化・細胞エネルギー向上

5-ALAリン酸塩を補うと、以下のような代謝効果が観察されています。

効果

生理的メカニズム

ミトコンドリア活性化

ヘム産生 → シトクロム合成 → 電子伝達系促進

ATP産生増加

細胞のエネルギー効率を改善

糖・脂質代謝改善

肝臓・筋肉での代謝促進、インスリン感受性改善

脳・神経保護

神経細胞の酸化ストレス低下

疲労回復・筋力維持

エネルギー再合成サイクル強化

  1. 5-ALA × 鉄(Fe²⁺)の相乗効果

ヘム合成には鉄イオン(Fe²⁺)が必要です。
5-ALAリン酸塩を単独で摂取しても、鉄が不足していると最終段階でヘムが合成されにくくなります。

そこで、臨床的には:

5-ALAリン酸塩 + 鉄(例:クエン酸第一鉄ナトリウム)
がセットで利用されます。

これにより:

  • ミトコンドリア内での電子伝達がスムーズに
  • 酸素利用効率が改善
  • NADH → NAD⁺ の再酸化が促進され、細胞のリセット力が高まる
  1. 医学的応用領域

5-ALAはすでに様々な分野で応用されています。

分野

主な応用例

がん診断

5-ALA投与後、腫瘍が赤く蛍光(PpIX蓄積)→ 脳腫瘍・膀胱がんで使用

糖尿病・メタボ予防

肝臓・筋肉での糖代謝改善作用

抗酸化・抗炎症

ミトコンドリアROS抑制、炎症性サイトカイン低下

神経変性疾患予防

ATP増加と酸化ストレス軽減による神経保護効果

アンチエイジング領域

NAD⁺再生促進・サーチュイン活性間接刺激

 

  1. 「アンチエイジング3本の矢®」における位置づけ

Dr. Shiggekky提唱の「アンチエイジング3本の矢®」では:

成分

主な役割

NMN

NAD⁺産生を直接補う

5-ALAリン酸塩

ミトコンドリア電子伝達系を“点火”し、ATP合成を促進

水素

過剰な活性酸素を中和し、NAD⁺/NADHサイクルを保護

三者の関係はまるで「エネルギー発電所の3要素」

  • NMN=燃料
  • 5-ALA=点火プラグ
  • 水素=排気浄化装置
  1. まとめ

働き

内容

ミトコンドリア活性化

ヘム合成を通じてATP産生を高める

代謝促進

糖・脂質代謝を改善しエネルギーバランスを整える

抗酸化・抗炎症

ROS生成を減らし、慢性炎症を抑制

NAD⁺サイクル促進

NADH酸化を助け、再生サイクルを円滑にする

アンチエイジング効果

細胞機能を若返らせ、エネルギーの質を高める

 

Author:

武本 重毅

聚楽内科クリニックの院長、医学博士。