最終章 「時間の王、老化の裁きを下す」
カテゴリー:
世界が静まり返ったその日、
アトピック城の時計という時計が、同時に止まりました。
鐘は鳴らず、
影は動かず、
風さえ、息を潜めたかのようでした。
人々は気づきます。
――時間が、進んでいない。
城の最奥。
誰も立ち入ることを許されなかった時の間に、
巨大な玉座がありました。
玉座に座るのは、
王冠も剣も持たぬ王。
白髪でも、若くもない。
年齢そのものが、姿を成した存在。
その名は——
時間の王(クロノス)。
彼の前には、
見えない天秤が浮かんでいました。
「老いとは、罪ではない」
王は、低く、しかし絶対の声で語ります。
「だが——
流れを止めた者は、裁かれる」
酸化伯爵、
糖化伯爵、
炎症の魔女。
彼らの影が、玉座の前に引き寄せられます。
「我らは、自然の摂理」
酸化伯爵が言います。
「破壊してなどいない」
糖化伯爵が続けます。
「守るために、燃やしただけ」
炎症の魔女が笑いました。
時間の王は、静かに天秤を傾けます。
「摂理を“暴走”させた罪——
それが、老化という名の歪みだ」
そのとき、
時の間に、青い鼓動が響きました。
ミトコンドリアマン、最後の来訪。
「老化は、罰ではない」
彼は王を見据えます。
「だが、
修復できるものまで老いに委ねる理由はない」
時間の王は、初めて微笑みました。
「……人が、そこまで言う時代が来たか」
王が指を鳴らすと、
空間に無数の“時計”が浮かびます。
それは、
一人ひとりの細胞の時間。
早く進むもの。
止まりかけたもの。
逆行しかけたもの。
「裁きを受けるのは、敵か?
それとも——人の選択か」
姫が、一歩前へ出ました。
「私は、塔に閉じ込められていました。
生まれつきだから、と」
彼女の肌は、今、柔らかな光を放っています。
「でも——
流れを取り戻せば、
時間は、優しくなると知りました」
時間の王は、深く頷きました。
「それが答えだ」
天秤が、静かに釣り合います。
酸化伯爵の影は、還元へと解かれ、
糖化伯爵の鎖は、分解され、
炎症の魔女の炎は、修復の熱へと変わりました。
時間の王は、玉座から立ち上がります。
「老化の裁きは下された。
だが、判決は——共存」
時計が、再び動き出します。
だがそれは、
ただ進む時間ではありません。
修復しながら、進む時間。
時間の王は、最後にこう告げました。
「時は、奪うものではない。
整えれば、味方になる」
そして王は、光の粒となり、消えました。
城に、朝が訪れます。
姫は、ミトコンドリアマンを見つめ、問いかけました。
「これで、終わりですか?」
彼は微笑み、答えます。
「いいえ。
ここからが、“治る時代”の始まりだ」
完
物語の核心メッセージ
- 時間の王=老化そのもの(不可逆ではない調律対象)
- 裁き=酸化・糖化・炎症の“暴走”是正
- 判決:共存=完全排除ではなく制御と調律
- 修復しながら進む時間=アンチエイジング3本の矢®の思想

