Director's blog
院長日記

「早く引退すれば幸せ?」―長寿時代の大きな勘違い

武本 重毅

私たちは、かつてないほど長く、しかも健康に生きられるようになりました。

ところが不思議なことに、欧米では昔より早く引退する人が増えています

増えた寿命が、そのまま「余暇の年数」に変わっているのです。

一見、理想的に聞こえますよね。

「できるだけ早く仕事をやめて、のんびり暮らす」。

でも実は、この考え方には大きな問題があります。

問題は年金よりも「生き方の設計」

引退の話は、すぐに年金や制度の議論になりがちです。

もちろん制度は大切ですが、もっと重要なのは人生そのものの設計です。

現在のモデルはこうです。

  • 若い頃に教育を受け

  • 子育てと仕事が重なる中年期に最も忙しく働き

  • 65歳で突然、仕事ゼロの生活へ

これは、寿命が短かった時代には成立しました。

引退後は10年ほど生きる想定だったからです。

しかし今は、

80代・90代まで生きるのが普通の時代。

20〜30年の「完全引退」は、

お金の面でも、心身の面でも、無理が出てきています。

実は、今の働き方が一番つらいのは「現役世代」

  • 子育て

  • 親の介護

  • 住宅ローン

  • 老後資金の不安

これらが一気に重なる中年期は、

人生で最もストレスが高い時期です。

「老後にゆっくりするため」に、

今の生活を犠牲にして走り続ける――

その結果、

子どもの成長や家族との大切な時間を

見逃してしまうことも少なくありません。

皮肉なことに、

人生は長くなったのに、日々の時間は足りないと感じている

それが現代人の現実です。

「仕事=65歳で終わり」は見直す時代へ

実は、多くの人は

「健康であれば、70歳、75歳まで働いてもよい」

と感じています。

現実にも、

  • 65〜74歳の約9割

  • 85歳以上でも6割

は、働くことが可能な健康状態にあります。

しかも、年齢が高いほど仕事の満足度は高いというデータもあります。

これから必要なのは「選べる働き方」

重要なのは、

「引退年齢を一律に引き上げる」ことではありません。

必要なのは、選択肢です。

  • フルタイムからパートタイムへ

  • 段階的な引退(フェーズド・リタイアメント)

  • ボランティアや地域活動

  • 第二のキャリア

  • 在宅勤務や柔軟な勤務時間

こうした働き方があれば、

  • 中年期の負担を軽くし

  • 子育て期に余裕を持ち

  • 高齢期も社会とつながり続ける

ことが可能になります。

老後は「何もしない時間」ではない

引退は、自然の法則ではありません。

人間がつくった仕組みです。

だからこそ、

寿命が延びた今の時代に合わせて

作り直すことができます

  • 仕事と休息を人生全体に分散させる

  • 年を重ねるほど、経験を社会に還元する

  • 「引退=終わり」ではなく、「関わり方の変化」と考える

これからの老後は、

親や祖父母の世代と同じではありません。

これまでにない、新しいステージです。

Dr. Shiggekky からのメッセージ

健康とは、

「長く生きるため」だけのものではありません。

長い人生を、無理なく、意味を持って生き続けるための土台です。

Dr. Shiggekky は、

体の健康だけでなく、

その先の生き方・働き方まで見据えた医療を大切にしています。

人生が長くなった今、

時間は、私たちの味方です。

新しい人生設計を、一緒に考えていきましょう。

Author:

武本 重毅

聚楽内科クリニックの院長、医学博士。