Director's blog
院長日記

「高齢者が増えると、社会の資源が足りなくなる?」

武本 重毅

― それはとても危険な思い込みです ―

「長生きする人が増えたら、

お金も、医療も、仕事も、地球の資源も足りなくなるのでは?」

こうした不安は、

“不足(スカーシティ)神話”と呼ばれる考え方です。

そしてこれは、

老いにまつわる誤解の中でも、

最も社会を分断しかねない危険な神話です。

高齢者が増える=人口爆発、ではありません

まず、はっきりさせておきたいことがあります。

👉 人口増加の原因は「長寿」ではありません。

実は、

長寿の国ほど、出生率は低下しています。

  • 教育水準が高い

  • 医療や衛生環境が整っている

  • 子どもの死亡率が低い

こうした条件が整うと、

人々は自然に「少ない子どもを大切に育てる」選択をします。

その結果、

先進国では

  • 人口は「増える」のではなく

  • 「高齢化(グレー化)」しているのです。

本当の人口問題は、別の場所にあります

一方で、

  • 平均寿命が短く

  • 医療・食料・水のインフラが不十分

な地域では、

人口増加が深刻な問題になります。

世界人口の増加のほとんどは、

アフリカ・一部のアジア・中東で起きています。

つまり――

「おじいちゃんが長生きしているから地球が苦しくなる」

これは、事実ではありません。

問題なのは、

長寿という恩恵が、世界で不平等に分配されていることです。

世代間対立は、本当に起きるのでしょうか?

不足神話は、

「高齢者 vs 若者」という

対立構造を生み出しがちです。

  • 年金は奪い合い

  • 医療は取り合い

  • 高齢者は“負担”

しかし、これは

ゼロサム(誰かが得すれば誰かが損をする)思考です。

現実には、

若者の多くは

「高齢者への支援をもっと充実させるべき」

と考えています。

人は、年を取った途端に

自己中心的になるわけではありません。

むしろ多くの場合、

家族や次世代、地球環境への関心は深まります。

「高齢者が働くと、若者の仕事がなくなる?」

これも誤解です。

実際には――

  • 高齢者の就業率が高い国ほど、若者の失業率は低い

    というデータがあります。

さらに、

これから多くの分野で

熟練人材が不足します。

  • 教育

  • 管理職

  • 図書館・事務職

  • 非営利団体のリーダー

  • 医療・介護・福祉分野

高齢者が働き続けることは、

  • 年金制度を支え

  • 経済を活性化し

  • 若い世代の負担を減らす

社会全体にとってプラスなのです。

本当に心配すべきなのは、どんな社会?

心配すべきなのは、

  • 高齢で

  • 病気がちで

  • 社会と切り離され

  • 働く機会も奪われた

そんな状態が当たり前になることです。

反対に、

高齢でも健康で、役割を持ち、社会とつながっている人が多い社会は、

  • 資源を浪費しません

  • 対立も生みません

  • 未来への希望を育てます

Dr. Shiggekky からのメッセージ

老いは、

「奪う存在」ではありません。

社会を支え、次世代につなぐ存在です。

不足を恐れて分断を生むより、

長い人生をどう活かすかを考える方が、

はるかに建設的です。

Dr. Shiggekky は、

  • 高齢者を「守られる側」としてだけ見るのではなく

  • 人生の後半を担う“現役の一員”として捉える医療

を大切にしています。

高齢化は、危機ではありません。

使い方次第で、社会の力になる変化なのです。

Author:

武本 重毅

聚楽内科クリニックの院長、医学博士。