Director's blog
院長日記

私たちが「長生きできる社会」になった本当の始まり

武本 重毅

― それは高齢者ではなく、「赤ちゃん」から始まりました ―

「人生100年時代」は、

高齢者の医療が進歩したから突然生まれた――

そう思われがちです。

しかし実は、

長寿社会の物語は“老後”ではなく、“赤ちゃん”から始まりました。

かつて「1歳まで生きる」ことは、当たり前ではなかった

人類の歴史の大半において、

平均寿命はおよそ20年でした。

これは、

  • 大人が若くして必ず亡くなっていた

    という意味ではありません。

最大の理由は、

  • 乳幼児の死亡率が非常に高かったこと

  • 出産時に母親が命を落とすリスクが高かったこと

でした。

1900年のアメリカでは、

  • 8人に1人の赤ちゃんが1歳までに死亡

  • 4人に1人が5歳までに亡くなっていた

親たちは、

「赤ちゃんは神様からの授かりものだが、

必ずしも長く一緒にいられる存在ではない」

と受け止めていた時代だったのです。

たった100年で起きた、驚くべき変化

20世紀のたった100年で、

社会は劇的に変わりました。

  • 乳児死亡率:約90%減少

  • 妊産婦死亡率:約99%減少

その結果、

1900年から2000年の間に

平均寿命は約28年も延びたのです。

ここで大切なポイントがあります。

👉 これは、

「すべての人が一斉に28年長生きした」

という意味ではありません。

👉 多くの子どもが大人まで生きられるようになったことで、

社会全体の平均寿命が引き上げられた


ということです。

医学だけの成果ではありません

この変化を

「医療の進歩のおかげ」

だけで説明することはできません。

また、

「人類が進化して強くなった」

わけでもありません。

進化は、こんな短期間では起こりません。

では、何が変わったのでしょうか?

寿命を延ばした本当の原動力は「文化」

寿命を延ばした最大の要因は、

人々の暮らし方=文化の変化でした。

文化は、

  • 医学

  • 技術

  • 社会制度

  • 衛生観念

を生み出し、

進化よりはるかに速く人間の生存条件を変えます。

人が「どこに住むか」が寿命を左右した

人類の多くの歴史では、

人は小さな集団や村で暮らしていました。

小規模な集団では、

  • 感染症が広がりにくく

  • 集団に免疫ができると自然に収束

することが多かったのです。

ところが約5,000年前、

狩猟採集から農耕へ移行し、

人は都市に集まり始めました

都市化のメリット

  • 飢えや寒さから守られる

  • 知識や技術が蓄積される

  • 科学や医学が発展する

都市化のデメリット

  • 感染症が爆発的に広がる

  • 水や食料が汚染される

  • 下水設備がなく、衛生状態が悪化

  • 食事が偏り、栄養バランスが崩れる

都市は、

人類の発展と同時に、病気の温床でもありました。

そこから、人類は学びました

長い試行錯誤の末、

人類は次のことを優先するようになります。

  • 清潔な水

  • 下水処理

  • 栄養の改善

  • 母子保健

  • 教育と知識の共有

これらはすべて、

「文化的な選択」です。

その積み重ねが、

まず赤ちゃんを救い、

結果として社会全体を長寿へ導いたのです。

Dr. Shiggekky からのメッセージ

長寿は、

奇跡でも、特別な才能でもありません。

社会が「どう生きるか」を選び続けた結果です。

そして今、

私たちは次の段階に立っています。

  • 子どもが生き延びる社会から

  • 「人生の後半をどう生きるか」を問う社会へ

Dr. Shiggekky は、

この長い歴史の流れを踏まえ、

人生100年時代を“安心して生ききる”ための医療

皆さんと一緒に考えていきます。

長生きは、偶然ではありません。

選び、育てていくものなのです。

Author:

武本 重毅

聚楽内科クリニックの院長、医学博士。