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院長日記

「糖尿病=ミトコンドリア病」連載 第3回 ― なぜ年齢とともに糖尿病は増えるのか 老化とミトコンドリアの深い関係

武本 重毅

「若いころは何を食べても平気だったのに、
年齢とともに血糖値が上がってきた」

これは多くの方が実感する変化です。
実際、糖尿病は加齢とともに増える病気です。

しかしここで一つ、
とても重要な問いがあります。

なぜ“年をとるだけ”で、
血糖の病気が増えるのでしょうか。

答えは、
膵臓でも、食事量でもなく、
ミトコンドリアの老化にあります。

■ 老化とは「エネルギーが作れなくなること」

老化というと、
シワや白髪、筋力低下を思い浮かべがちですが、
その本質はもっとシンプルです。

エネルギーを作る力が、
少しずつ落ちていくこと

年齢とともに、ミトコンドリアは

  • 数が減る
  • 動きが鈍くなる
  • エネルギー効率が落ちる

という変化を起こします。

すると、同じ食事・同じ生活でも、
体は以前のように糖や脂肪を
うまく処理できなくなります。

これが、
「年齢とともに血糖が上がりやすくなる」
本当の理由
です。

■ 加齢による変化は、膵臓より先に起きている

「年をとるとインスリンが出なくなる」
と思われがちですが、実際には違います。

多くの場合、

  1. 先にミトコンドリアが弱る
  2. 糖を使いきれなくなる
  3. インスリン抵抗性が生まれる
  4. それを補おうとしてインスリン分泌が増える
  5. 最後に膵臓が疲弊する

という順番で進みます。

つまり糖尿病は、
老化の“結果”として現れる病態なのです。

■ 筋肉が減ると、なぜ血糖が上がるのか

年齢とともに起こる変化の一つに、
筋肉量の低下(サルコペニア)があります。

筋肉は、
体の中で最大の「糖の処理工場」です。

そして筋肉の中でも、
実際に糖を燃やしているのは――
ミトコンドリアです。

筋肉量が減り、
ミトコンドリアの数と質が落ちると、

  • 血糖を処理できる場所が減る
  • 余った糖が血中に残る

結果として、
糖尿病が進行しやすくなります。

これは「食べすぎ」ではなく、
“使えなくなった”ことによる血糖上昇です。

■ なぜ高齢になるほど治療が難しくなるのか

高齢になるほど、
血糖コントロールが難しくなるのは自然なことです。

それは、

  • ミトコンドリアの予備力が少ない
  • 無理な治療が疲労や低血糖につながりやすい

からです。

だからこそ、高齢期の糖尿病治療では、

「どこまで下げるか」より
「どう元気を保つか」

が重要になります。

■ 老化を止めることはできない。でも…

年をとること自体は止められません。
しかし、

老化のスピードを緩めること
エネルギー低下を食い止めること

は可能です。

その中心にあるのが、
ミトコンドリアをいたわり、
回し続けるという発想です。

糖尿病治療は、
若い人の病気を治す医療ではなく、
老化と共に歩く医療へと
変わりつつあります。

■ 第3回のまとめ

  • 糖尿病は
    老化の延長線上にある病態
  • 加齢で最初に弱るのは
    ミトコンドリア
  • 血糖上昇は
    「食べすぎ」ではなく
    「使えなくなった結果」
  • 高齢期治療のゴールは
    数値より生活の質

▶ 次回予告(第4回)

「血糖を下げても治らない理由
― なぜ“エネルギー視点”が必要なのか」

GLP-1やSGLT2が
「どこに効いて、どこに効かないのか」を
ミトコンドリアから整理します。

Author:

武本 重毅

聚楽内科クリニックの院長、医学博士。