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クリニックからのお知らせ
熱中症は「暑さ」の病気ではありません 〜細胞の回復力から考える、新しい熱中症の見方〜
毎年夏になると、
「水分をこまめに摂りましょう。」
「暑い時間帯の外出を控えましょう。」
と呼びかけられます。
もちろん、これらはとても大切です。
しかし近年の研究から、
熱中症は単に「暑さ」によって起こる病気ではないことが分かってきました。
本当に起きているのは、
細胞の中で回復システムが破綻すること
なのです。

熱中症では、細胞の発電所が止まり始めます
私たちの細胞には、
エネルギーをつくる
ミトコンドリア
があります。
暑さという強いストレスを受けると、
まずミトコンドリアが傷つき、
エネルギー(ATP)を十分につくれなくなります。
すると、
細胞は自分自身を修復できなくなります。
最近のレビューでは、熱ストレスによるミトコンドリア機能低下とエネルギー代謝の破綻が、多臓器障害につながる重要な病態として整理されています。

活性酸素が増え、炎症が広がります
ミトコンドリアがうまく働かなくなると、
活性酸素(ROS)が増えます。
活性酸素は本来、
細菌を攻撃したり情報伝達に役立つ大切な分子ですが、
過剰になると、
細胞を傷つけ、
炎症を広げてしまいます。
熱中症では、
この活性酸素の増加が、
肺、
心臓、
肝臓、
腎臓、
脳、
そして腸にまで影響することが報告されています。

腸も熱中症で傷つきます
実は、
熱中症では腸も大きなダメージを受けます。
暑さによって腸への血流が減ると、
腸の細胞が傷つき、
腸のバリア機能が低下します。
その結果、
炎症を引き起こす物質が血液へ入りやすくなり、
全身の炎症を悪化させる可能性があります。

体は「回復できなくなる」
熱中症は、
単に体温が高いだけの病気ではありません。
細胞では、
- エネルギー不足
- 活性酸素の増加
- 炎症
- ミトコンドリア障害
- 細胞死
が連鎖的に起こります。
つまり、
身体が本来持っている回復システムが追いつかなくなった状態
なのです。

高齢者が重症化しやすい理由
高齢になると、
ミトコンドリア機能は少しずつ低下します。
回復力も低下します。
そのため、
同じ暑さでも、
若い人なら回復できるストレスに、
高齢者では耐えられなくなることがあります。
これは、
「年齢が原因」
というより、
回復力が低下していること
が大きく関係していると考えられます。

普段からできること
熱中症対策は、
水分補給だけではありません。
日頃から、
- 良い睡眠
- 適度な運動
- バランスの良い食事
- 十分な休養
- 暑さを避ける環境づくり
によって、
細胞の回復力を保つことも大切です。
これらは、
ミトコンドリアが働きやすい環境をつくることにもつながります。

MITO RISING Perspective
私は、
熱中症とは
「暑さ」の病気ではなく、
暑さというストレスに対して、身体が回復できなくなった状態
だと考えています。
老化も同じです。
感染症も同じです。
大切なのは、
傷つかないことではありません。
傷ついた後に、どれだけ元へ戻れるか。
これからの医療は、
病気を治療するだけではなく、
回復力(Recovery Capacity)を守り、育てる医療
へ進化していくと私は考えています。

