Director's blog
院長日記

第1週|The Science of Recovery:ミトコンドリアから、「回復する生命」へ

武本 重毅

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10月8日、新しい5巻シリーズ「ミトコンドリア回復医療」という新しい健康学が始まります。

その第1巻が、

『回復力を取り戻す!』

です。

発売まであと2週間。

ここからは、新刊の中心にある Recovery Capacity ― 回復力 を、少しずつ科学の側から考えてみたいと思います。

私の出発点は、ミトコンドリアでした

長くミトコンドリアを見ていると、単なる「エネルギーをつくる発電所」という説明だけでは足りないことに気づきます。

ミトコンドリアは、エネルギー産生だけでなく、

  • ストレスへの応答
  • 代謝の切り替え
  • 活性酸素シグナル
  • 免疫との連携
  • 細胞死
  • mitophagy
  • biogenesis
  • fusion / fission

などを通して、細胞が変化に対応する過程に深く関わっています。

つまり私が次第に興味を持つようになったのは、「ミトコンドリアをどう増やすか」だけではありませんでした。

それよりも、

生命は、傷ついたあとにどうやってもう一度働ける状態へ戻るのか。

という問いでした。

Mitochondria alone is not enough.

しかし、ここで重要なことがあります。

私は、「ミトコンドリアさえ整えれば、すべてが回復する」とは考えていません。

感染から戻るには免疫が必要です。

炎症を起こすだけでなく、終わらせる仕組みも必要です。

酸素や栄養を届ける血流が必要です。

組織環境を整えるリンパ系も関わります。

筋肉は身体の機能的予備力を支えます。

睡眠と概日リズムは、全身の調節に関わります。

代謝は、その時々に必要なエネルギー利用へ切り替わる必要があります。

つまり、

Recovery is not located in one organ.

Recovery emerges from the network of life.

だから私は「Recovery Network」と考えるようになった

従来の医学では、脳・心臓・肺・肝臓・腎臓というように、臓器ごとに身体を詳しく診ます。

これはもちろん不可欠です。

しかしRecovery Capacityという視点では、「それぞれの臓器が働いているか」だけでなく、

「それらが、必要なときに互いにつながって働けるか」

を見る必要があるのではないでしょうか。

私はこれを、

Recovery Network

として考えています。

ミトコンドリアはその重要な構成要素です。

しかし位置づけは、

Mitochondria alone

ではなく、

Mitochondria within the Recovery Network.

です。

回復には「順序」もある

回復は、すべての機能を一斉に強くすることでもありません。

感染が起きれば、

Detection → Response

が必要です。

しかし反応し続ければよいわけではありません。

その後は、

Clearance → Repair → Resolution → Homeostasis

へ進む必要があります。

つまり重要なのは、

必要な反応が、必要なときに起こり、必要なときに終わること。

回復とは「強さ」だけではなく、

coordination and timing

でもあるのです。

老化も、少し違って見えてくる

この視点に立つと、老化とはミトコンドリアだけが老化することではありません。

免疫も変わる。

炎症制御も変わる。

血管も変わる。

筋肉も変わる。

睡眠も変わる。

代謝も変わる。

そして、それらの間の情報交換や協調性も変化していく。

すると、一つひとつの臓器がまだ働いていても、

身体全体として「元へ戻る」ことが難しくなる。

私はここに、

Recovery Capacityの低下

という老化の重要な側面があるのではないかと考えています。

Recovery is a systems property.

だから私は今、回復力を一つの物質や一つの遺伝子で説明しようとはしていません。

One molecule → One target

だけではなく、

Network → Coordination → Recovery

へ。

そしてさらに、

Recovery is the restoration of self-organization.

回復とは、生命がもう一度、感知し、反応し、修復し、調整し、秩序をつくり直すこと。

そこにRecovery Capacityという考え方の核心があるのではないかと思っています。

THE SCIENCE OF RECOVERY|WEEK 1

Mitochondria are not the whole answer.

They are part of the Recovery Network.

これが、私が「ミトコンドリア」から始まり、やがて「回復力」という問いへ進んだ科学的な理由です。

そして次は、

第2週|Can Recovery Capacity Be Restored?

へ進みます。

回復力がネットワーク全体から生まれる動的な能力だとすれば、睡眠、運動、栄養、概日リズム、ストレス適応、ミトコンドリア品質管理などを通して、その条件を変えることはできるのか。

「老化だから仕方がない」から、

「変えられる部分はどこにあるのか」

へ。

そこを考えてみたいと思います。

Author:

武本 重毅

聚楽内科クリニックの院長、医学博士。