カリウムの話題その1:カリウムを上手く取り込む
前回はグレープフルーツのお話でした。
グレープフルーツ1個で100kcalという低いカロリーなので
ダイエットに最適ということを書きましたが
これはバナナ1本分のカロリーに相当します。
糖尿病患者さんにとっては果物1日の目安量(1単位)はバナナ1本であり
したがいまして、バナナ2本(本日外来受診した患者さんの場合)は食べすぎということになります。
そのバナナですが
カリウムを豊富に含んでいますので
カリウムが低下している患者さんには
薬を処方するよりもバナナを食べるようにお勧めすることがあります。
本日からは、そのカリウムのお話です。
カリウムは人体に必要なミネラルの一種で
成人の体内に約200g含まれています。
大部分は細胞内に存在し
細胞外液に多いナトリウムと相互に作用しながら
神経の興奮(活動電位)や
筋肉の収縮に
関わっています。
また
細胞の浸透圧を調節したり
水分を保持したり
するのに重要な役割を果たしています。
ナトリウムを身体の外に排出する作用がありますので
血圧のコントロールにも役立ちます。
不足すると上記の働きに影響することはもちろん
脱力感
食欲不振
筋無力症
精神障害
不整脈
などの症状がみられることがあります。
日本人の食事摂取基準(2020年版)では
生活習慣病の予防を目的とした成人1人1日当たりのカリウム摂取の目標量を
男性3,000mg以上
女性2,600mg以上
としています。
また、2012年に公表されたWHOのガイドラインでは
男女とも3,510mg/日
を推奨しています。
カリウムを多く含む食材
(100mlあたりのカリウム含有量)
野菜
切り干し大根 3,500mg
ドライトマト 3,200mg
アボカド 720mg
ほうれん草 690mg
枝豆 650mg
にんじん 630mg
小松菜 500mg
ブロッコリー 460mg
西洋かぼちゃ 450mg
大根は皮つき生で100gあたり230mgであるのに対し、切り干し大根になると3,500mgになります。
果物
ドライバナナ 1,300mg
ドライマンゴー 1,100mg
干し柿 670mg
バナナ 360mg
メロン 350mg
キウイフルーツ(黄) 300mg
キウイフルーツ(緑) 290mg
さくらんぼ(米国産) 260mg
さくらんぼ(国産) 210mg
パパイア(完熟) 210mg
バナナは生だと100gあたり360mgであるのに対し、ドライバナナになると1,300mg以上になります。
海藻類
干しひじき 6,400mg
真昆布 6,100mg
乾燥わかめ 5,200mg
あおさ 3,200mg
焼き海苔 2,400mg
飲み物にも多くのカリウムが含まれています
(100mlあたりのカリウム含有量)
玉露 340mg
ほうじ茶 24mg
玄米茶 7mg
トマトミックスジュース 200mg
トマトジュース 230mg
オレンジジュース(濃縮還元) 190mg
オレンジストレートジュース 180mg
牛乳 150mg
乳酸飲料 48mg
コーヒー 65mg
紅茶 8mg
スポーツドリンク 26mg
出典:文部科学省【日本食品標準成分表2020年版(八訂)】
飲み物の種類によっては
飲み物だけで1日のカリウム目標値を超えてしまう場合があります。
飲み物の特徴を知り、カリウムの摂取量が多くならないようにしましょう。
例えば、玉露を麦茶にする
コーヒーを紅茶にすると
飲み物からのカリウム摂取を減らすことが可能です。
カリウムは水に溶けやすい性質があります。
そのため食材を水にさらしたり茹でたりすると
カリウムの摂取可能な量が減ってしまいます。
食材中に含まれるカリウムを効果的に摂取するには
煮汁ごと食べられる汁物やスープ料理がおすすめです。
電子レンジで加熱すると
水で栄養素が流れることがないのでカリウムの量を減らさずに摂取できます。
玄米やライ麦パンのような精白されていない食材のほうが
白米や精白された白いパンよりも
多くのカリウムをとることができます。
カリウム摂取量を減らしたいときは
水に溶けやすい性質を踏まえた調理法を選びましょう。
野菜は細かく切って水にさらしたり
茹でたりすることで
カリウムが水に溶け出して摂取量を減らせます。
またカリウムが少ない食材を知ることが最も大切です。
果物は缶詰から取り出した実はカリウムが少なくなっています。
例えば西洋なしの場合、100gあたりのカリウム含有量が生で食べると140mgであるのに対し、缶詰では55mgとなります。