老化は疾病-「老いなき世界(LIFE SPAN)」その3:老化とは情報の喪失
カテゴリー:
老化の唯一の原因についての仮説「老化の情報理論」
ごく単純にいえば、老化とは情報の喪失にほかありません。
生体内には2種類の情報があり、それぞれまったく異なる方式で符号化されています。
1つめは、デジタル情報です。
具体的にはDNA構成基本単位(ヌクレオチドの塩基部分)
アデニン=A、グアニン=G、シトシン=C、チミン=Tのいずれかです。
DNAはデジタル方式なので、情報の保存やコピーを確実に行なうことができます。
またDNAはじつに頑丈な物質でもあります。
もう1種類の情報はアナログ情報です。
「エピゲノム」と総称され
これは、親から子へと受け継がれる特徴のうち、DNAの文字配列そのものが関わっていないものを指します。
DNAによらないこうした遺伝の仕組みを「エピジェネティクス」と呼びます。
ゲノムの遺伝情報がDNAとして保存されているのと同じように
エピゲノム情報はクロマチン構造にしまわれています。
細胞核内のDNAは、ただ長いまま1本で適当にひらひらと漂っているわけではなく
いくつか(ヒトの場合は46本)に分割されたうえでヒストンという
ごく小さな球状のタンパク質に巻きついた状態で存在します。
DNAとヒストンは数珠を通した紐のような姿になり
更に何重ものループ状になります。
このような構造をクロマチンと呼び
このクロマチンがさらに折りたたまれたものが染色体です。
ゲノムがコンピュータだとするなら
エピゲノムはソフトウェアであるといえます。
ソフトウェアとして
分裂したばかりの細胞に対して、どんな種類の細胞になればいいのかを教え
場合によっては何十年も同じ種類であり続けるように指示をしています。
アナログ形式は
細胞内外の環境の求めに応じて変えたり戻したりをわりあい容易にできるし
しかもデジタル情報とは違って
取り得る値の選択肢が決まっているわけではなく
だから、ほぼ無制限に様々な値を格納することができます。
おかげで、一度も遭遇したことのない環境条件に対してもうまく反応できるわけです。
その反面、アナログシステムは大きな欠点を抱えもっています。
アナログ情報は時間とともに劣化するのです。
そしてもっと厄介なのは、コピーする際に情報が失われるのです。