Director's blog
院長日記

軽度認知障害(MCI)かもしれないと思ったら その3:トランスサイレチン

武本 重毅

トランスサイレチン(transthyretin:TTR)は

血中では反急性期反応蛋白質として機能し,炎症,妊娠,腫瘍,低栄養などで血中レベルが低下することから

プレアルブミンとも呼ばれており

栄養サポートチーム(nutrition support team:NST)が

在院日数の短縮などで指標として活用される重要な蛋白質のひとつとなっていました。

また

サイロキシン(T4)およびレチノール結合蛋白質(retinol binding protein:RBP)を介して

ビタミンAの担体としてはたらいており

その機能からトランスサイレチンと呼ばれるようになりました。

 

髄液のトランスサイレチン濃度は加齢とともに徐々に上昇していくことが知られていますが

アルツハイマー型認知症(アルツハイマー病)患者では

正常対照群に比べて有意に減少している

髄液トランスサイレチン濃度とアルツハイマー病患者脳の老人斑の程度が負の相関を示す

トランスサイレチンアルツハイマー病のモデルマウスでAβ線維の凝集を抑制する

という報告があります。

また

記憶障害を誘起したマウスにω3 系を継続的に投与すると

トランスサイレチンの発現が海馬を中心に誘導され

記憶障害が改善すること

末梢神経損傷に対してもトランスサイレチンが保護的に働くことなど

トランスサイレチンには神経組織保護作用があることが次々に明らかにされています。

Author:

武本 重毅

聚楽内科クリニックの院長、医学博士。