老化に関連するリンパ球:老化関連T細胞と老化関連B細胞
今回ご紹介するのは
京都大学大学院医学研究科腎臓内科学講座
柳田素子教授らの研究グループによる発表論文です。
わたしは熊本市CKD(慢性腎臓病)対策病診連携医です。
毎週土曜日に市内の血液透析病院の外来で
多くの慢性腎臓病患者を診療していることもあり
この研究に興味をもちました。
わたし自身がCD30研究に携わっているのも理由のひとつです。
高齢者の腎臓病は
若年者と比べて治りにくいことが報告されています。
これまでの研究から
高齢個体の腎臓において
障害後慢性期に「三次リンパ組織」と呼ばれる異所性のリンパ組織が誘導され
この組織が炎症を遷延させることが
正常な組織修復を遮る可能性が示されていました。
今回新たに
加齢に伴い増加する2種類のリンパ球
老化関連T細胞(SAT細胞:Senescence-associated T cells)と
老化関連B細胞(ABCs: Age-associated B cells)が
マウス腎臓の三次リンパ組織内部で相互作用し
三次リンパ組織の形成を促進することを発見しました。
その相互作用分子としてCD153-CD30経路を同定し
この経路の遮断により
三次リンパ組織の誘導が阻害され
腎臓の組織修復が促進されることで
腎障害の予後が改善することも明らかにしました。
さらに、これらの細胞および分子は
ヒトの同様の病態でも確認されました。
したがいまして
この研究で見いだした免疫細胞や相互作用分子を標的とした治療法は
高齢者の腎臓病の回復を促し
透析導入を遅延させる可能性があります。