Director's blog
院長日記

アンチエイジング医療と漢方

新型コロナウイルスのパンデミックを機に、自分自身とかかりつけ患者さんに役立つ知識と情報を得ようとはじめた「アンチエイジング医学」の勉強です。

先日試験を受けた「日本抗加齢医学会専門医認定試験」、そして毎年受けて6割以上の得点をキープしている「日本内科学会セルフトレーニング問題」で学習した知識は、実践的な毎日の臨床に活かされています。

 

その中から、本日ご紹介したいのは、かかりつけ患者さんに好評のアンチエイジング医療に役立つ漢方薬ベスト5です。

 

まず一つめは「麦門冬湯」です。コロナ禍から抜ききれていない状況の中で気道を最適な状態に保ちます。

この漢方薬について知ったのは、昨年度の「日本内科学会セルフトレーニング」でした。新型コロナウイルス感染後に長引く咳に効果のある漢方薬として解答欄から選択しました。

実際昨年は、私たちのクリニックを受診する中に「喉の詰まった感じがとれない」「他の人がいる中で、咳が出始めると止まらない」「話していて、咳が止まらない」という悩みを訴える患者さんが増えていました。

自由診療を望まれるのであれば、私たちが得意とする「アンチエイジング3本の矢」のひとつ「水素ガス吸入療法」で、ウイルス感染による気道・肺の活性酸素種(ROS)を除去する治療をおこないます。

しかし多くの患者さまは保険診療での治療を希望されますので、「長引く咳、気管支炎、気管支喘息」に効果のある「麦門冬湯」を院内処方します(当院では必要なお薬のほとんどを院内に持っていますので、受付で直接お渡ししています)。そして、これがよく効きました。大人気でした。

 

2つ目と3つ目は、メタボリック症候群に頻用される「八味地黄丸」に牛膝・車前市という2つの生薬が加わった「牛車腎気丸」です。

加齢にともなう種々の訴え、すなわち糖尿病高血圧前立腺肥大夜間尿腰痛陰萎白内障耳鳴などに用いられます。すなわち、老化によって起こる諸症状に対する薬です。

ただし、胃腸が丈夫なことが条件です。

 

そして4つ目と5つ目は、その胃腸にはたらく「六君子湯」と「補中益気湯」です。

六君子湯」に含まれている陳皮(みかんの皮)には、セロトニンと拮抗的に働いて胃や十二指腸にある細胞からグレリン分泌を増強させるはたらきがあります。このグレリンは生体が持つ唯一の食欲を増進させるホルモンです。

さらに「補中益気湯」は、病後や術後の全身倦怠感に対して胃腸のはたらきを高め体力を補い元気をつけます。感染症対策として使用され、抗がん剤による副作用を軽減します。作用機序としては、これまでに抗ウイルス効果(インフルエンザなど)NK(ナチュラル キラー)細胞活性化細胞障害性Tリンパ球誘導などが知られています。最近の報告では、がん増殖抑制効果も報告されており、実際に私たちの外来通院されている患者さまの中にも治療効果が認められており、その予想以上の効果を実感しています。そして、慢性閉塞性肺疾患(COPD)に対する効果も報告されており、喫煙により発がんした多くの患者さんが持病としてもっているCOPDにも効けば、私としても嬉しい限りです。

 

私たちはアンチエイジング医療を進めており、わたし自身が120歳、150歳になるまで病気にならず本当の若返りをするかどうかは実験中ですが、現時点で皆さまに提供しているのは、老化にともなう疾患の予防であり、老化関連疾患への治療介入という段階です。

 

どうぞご期待ください。

Author:

武本 重毅

聚楽内科クリニックの院長、医学博士。