アルカリの腸内環境下においてケイ素(シリコン)が水と反応し水素を発生
今年に入り、私たちのクリニックで取り扱うようになったのが
腸内環境で水素ガスを発生して、
悪玉活性酸素であるヒドロキシラジカルを選択的に中和してくれるサプリメントです。
本日ご紹介する論文は
1.大阪大学 産業科学研究所
2.大阪大学 大学院医学系研究科 泌尿器科学
3.大阪大学 大学院医学系研究科 神経細胞生物学
の皆様の研究です。
大阪大学のホームページを参考にしました。
https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2020/20200618_1
Sci Rep. 2020 Apr 3;10(1):5859.
doi: 10.1038/s41598-020-62755-9.
Renoprotective and neuroprotective effects of enteric hydrogen generation from Si-based agent
Yuki Kobayashi # 1, Ryoichi Imamura # 2, Yoshihisa Koyama 3, Makoto Kondo 3, Hikaru Kobayashi 4, Norio Nonomura 5, Shoichi Shimada 6
細胞の酸化、すなわち身体がさびることによって、色々な疾患が発症します。
細胞の酸化の最も大きな原因は、代謝等で体内に発生する悪玉活性酸素のヒドロキシラジカルです。
代謝は常時行われているために、ヒドロキシラジカルを効果的に消滅させることは大変困難でした。例えば、水素水では1L中に含まれる水素量は、最大(飽和濃度の水素水)でも気体換算で18mLにすぎません。さらに、一般の水素水の濃度は飽和濃度よりもかなり低くなっています。
また、吸収され各器官に輸送された水素は、1時間程度でなくなってしまうと報告されています。
したがって、細胞が酸化される結果発症する種々の疾患を、水素水の摂取によって防止するには無理があると思われます。
本研究グループは
細胞の酸化を防止するには、多量の還元剤を常時体内に存在させる必要があると考え、
還元剤である水素を体内で常時発生させることが有効であると発想しました。
慢性腎臓病、パーキンソン病は、酸化ストレス が関与することが知られており、根本的な治療法がない難治性の疾患です。
慢性腎臓病は日本だけで1,300万人もの患者がおり、重症化すれば透析治療が必要となります。透析患者は34万人に達しており、今後益々患者数が増加する可能性があります。透析治療には1人あたり年間約600万円を要しており、34万人の透析患者に要する治療費は、年間約2兆円と莫大です。
今回、産業科学研究所の小林教授らは体内で水素を発生させるシリコン(ケイ素)製剤を開発し、その製剤について、酸化ストレスが関与する疾患に対する効果を医学系研究科の島田教授らが検証しました。
本研究の成果
1)体内で水素を発生させるシリコン(ケイ素)製剤の開発
2019年10月25日の研究成果プレスリリースで発表したとおり、研究グループは、体内で水素を発生させるシリコン(ケイ素)製剤を開発しました(https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2019/20191025_1)。今回は、このシリコン(ケイ素)製剤が国内で1,300万人もの患者がいる慢性腎臓病や根治療法がないパーキンソン病を予防・治療できる大きな可能性を見出しました。
シリコン(ケイ素)製剤は水と反応して水素を発生しますが、アルカリ性環境で水素発生量と発生速度が顕著に増加するという性質を持っています。したがって、シリコン(ケイ素)製剤を摂取すれば、酸性環境の胃では水素が発生しませんが、弱アルカリ性の膵液が分泌される腸内で水と反応して、水素が発生します。 (図1) に示すように、膵液と類似したpH8.3、36°Cの環境下で、1gのシリコン製剤から400mL以上の水素が24時間以上発生し続けます。この発生水素量は、飽和水素水22L以上に含有される水素量に相当します。以前公表したことに加えて、腸内で発生した水素は効率よく吸収され、悪玉活性酸素のヒドロキシラジカルを消滅しました。
図1 シリコン(ケイ素)製剤と弱アルカリ性水溶液との反応による水素発生