水素吸入療法の力 その③:ヒト研究における有効性(心血管疾患)
心血管疾患は世界中で死亡の主な原因であり、そのため新しい治療法が必要とされています。
いくつかの臨床研究では、水素(H2)の吸入または飲用水は心血管疾患の転帰を改善できると結論付けられており、
そのほとんどは標準治療との併用によります。
初期段階/初期の臨床試験では、心停止後症候群の患者10名を対象に、目標体温管理と組み合わせた 2% H2ガスの吸入の効果を評価しました。
H2吸入は、改善が統計的に有意ではなかったものの、患者の神経学的転帰を良好に維持することがわかりました。
さらに、90日生存率は、対照群と比較してH2群で有意に良好でした。
上記と同じ治療を受けた心停止後症候群の患者5名を対象とした別の研究では、
動脈血H2濃度が測定可能であり、
酸化ストレスとサイトカインレベルの減少の兆候が見られました。
20人の患者を対象としたやや大規模な研究では、心筋梗塞に対する経皮的冠動脈形成術後の患者で、H2療法の左室リモデリングに関する健康増進効果が認められました。1.3% H2吸入による治療開始後6か月の追跡調査では、左室の拍出量と駆出率の改善が対照群よりも数値的には大きかったようです(後者は有意ではありません)。
H2は血管機能の有用な調節因子であることも示されています。血流に依存した血管拡張は、プラセボと比較して、H2を多く含む水(7 ppm = 7 mg/L)を飲んだ患者で有意に改善しました。
これらの研究は、
低濃度H2含有ガスの吸入と
H2を多く含む水の飲用が、
それぞれ心臓と血管の病気の治療に有効である可能性があることを示しています。
心筋梗塞時の水素(H2)拡散のモデル
吸入したH2は短時間で体内に取り込まれ作用するので、急性の酸化ストレスに対する防御に適しています。
とりわけ心筋梗塞において点滴すると血圧が上昇し、心筋の治療中に重大な障害となりますが、
H2の吸入は血圧には影響を及ぼすことはありません。
また、H2は血管が梗塞され血流が停止した患部にも拡散で到達できることが実験的にも確認されているので、
再灌流時に発生する活性酸素腫(ROS)の障害を防御できるという点もほかの薬剤と異なる利点です。