水素吸入療法 その13:抗酸化酵素と酸化ストレス
酸素毒性を克服するために、私たちは「抗酸化酵素」を持っています。
例えば、スーパーオキシドジスムターゼ、通称SODです。この酵素は、スーパーオキシドという危険物質を、より安全な過酸化水素に変換します。
このSOD酵素には亜鉛・銅を含むSODとマンガンを含むSODがあり、前者は細胞質で、後者はミトコンドリアではたらきます。
スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)酵素と対で働く
グルタチオンペルオキシダーゼ酵素またはカタラーゼ酵素によって、生成した過酸化水素は水と普通の酸素(三重項酸素)に分解されラジカルは消去されます。
酸化ストレスとは、
「生体の酸化反応(ラジカル生成系)と抗酸化反応(ラジカル捕捉系)のバランスが崩れ、
前者に傾いて活性酸素種(ROS)の産生が高まり、
修復できない程度の生体傷害が蓄積し、生体機能の傷害が生じた状態」と定義されています。
その活性酸素種の中で、ヒドロキシラジカルは最も破壊的なラジカルであり、
発生部に接する生体膜を構成する多価不飽和脂肪酸と反応して脂質の過酸化を促し、
膜脂質から電子を奪うと脂質過酸化の連鎖反応が始まります。
酵素などのタンパク質を変性させ、核酸の分解を引き起こし、細胞傷害をもたらします。
これが種々の病気を引き起こし、老化や発ガンにも関係しています。
酸化ストレスを引き起こす病態は多種多様にあります。
感染・炎症、高血糖、紫外線・放射線への曝露、鉄などの遷移金属過剰、ある種の薬剤の作用などです。
そして、これらの慢性的な酸化ストレス状態は、すべて老化や発がんと関連することが明らかになっています。
私たちの体内では多かれ少なかれ常に活性酸素種が発生しており、
それによる酸化ストレスはがん発生の原因として普遍的な因子と考えられるようになりました。
このため、特に最も反応性の高い活性酸素種であるヒドロキシラジカルをいかにして無害化するかが長年の課題でした。