子曰く、道に志(こころざ)し、徳に拠(よ)り、仁(じん)に依(よ)り、芸(げい)に游(あそ)ぶ。 論語【述而篇】
孔子が考えた“完全なる人物”像
完全な人物になるためには、まず第一に道を志さねばならない。道とは人たるものが当然踏むべき人道のことである。
次に徳によって世に対処しなければならない。徳とは韓退之(かんたいし)の『原動(げんどう)』にある「己(おのれ)に足(た)って外に待つなきこと」で、自らやましいところがなく、外に利を求めて他へ害を及ぼすような憂いをなくすようにする心情である。
仁とは博(ひろ)く愛することで、単に自ら足るを知って他へ迷惑をかけないだけでなく、他へ幸福を分かち与えようとする心情である。この心情がなければ、完全な人物とはいえない。
要するに、人には志があるだけでは、いかにその志が人道を踏まえようとする立派なものであっても、人の人たる効果を上げ得ないことになる。人は行為があってはじめてその人の価値が知れるのだ。
孔子のいう「芸」とは六芸(りくげい)(礼法・音楽・弓術・馬術・書法・算術)で、いわゆる趣味である。完全な人物であるためには、趣味で多少の余裕を身につける必要がある。
(渋沢栄一「論語」の読み方、竹内均編・解説)
この夏、59歳を迎えるまでに、自身の生き様をしっかりと考えてみたい。