ヘムとポルフィリン 10:ヘム量の調節
ヘムは、ミトコンドリアを持たない成熟赤血球以外のほとんどすべての真核細胞のミトコンドリアと細胞質で起こる一連の反応を通じて合成されます。
ヘム生合成の約85%は骨髄において赤血球系前駆細胞内で起こり、このヘムはヘモグロビン (Hb) に組み込まれます。
残りのほとんどは、肝細胞が、カタラーゼ、シトクロム P450、シトクロム B5、ミオグロビン (Mb)、シトクロムc、およびその他のミトコンドリアシトクロムの中心部位となるヘムを産生します。
ヘム生合成は、ミトコンドリアにおいて
スクシニル-CoAとグリシンの縮合反応で開始されます。
この反応は5-アミノレブリン酸合成酵素(ALAS)により触媒され、5-アミノレブリン酸(ALA)が合成されます。
ヒトでは、2種類のALASアイソザイムが発現しています。
ALAS1は全身で普遍的に発現し
ALAS2は赤血球前駆細胞に発現しています。
(ヘム生合成過程の異常と急性肝性ポルフィリン症(AHP) | Porphyria.jp)
細胞外および細胞内のヘム濃度の調節は、病的な鉄またはヘムの蓄積を防ぐために極めて重要です。
ヘムの合成と分解は、それぞれヘム自体によって阻害および誘導されます。
ヘム生合成は、赤血球系細胞と非赤血球系細胞で異なる方法で調節されます。
非赤血球系細胞では、ヘムは
(1) ヘム生合成の律速酵素であるALAS1の合成速度および活性を低下させ(すなわちヘムはALAS1合成の負の調節因子)、
(2) ヘムの異化(分解)を増加させることによって、
ヘム自身の合成を低下させます。
すなわち、細胞内のヘムのプールが枯渇すると、ALAS1の合成が誘導されてヘム生合成が増加するという仕組みです。
対照的に、赤血球系細胞では、
ヘムは正のフィードバック制御因子として機能し、ヘム生合成を促進し、分解を阻害します。
ALAS2はヘムによるフィードバック調節を受けません。