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クリニックからのお知らせ

高齢者施設内の薬剤耐性菌感染者への対応

聚楽内科クリニック

本日の「院長日記」では

「無症候性の尿路感染者(asymptomatic bacteriuria:ASB)」で、かつESBL産生菌が検出されている高齢者の場合の対応について、

医療的観点から解説しました。

そのまとめを以下に示します。

職員向け説明資料:無症候性細菌尿とESBL産生菌への対応

アンチエイジング3本の矢®️代表 武本重毅

1. 無症候性細菌尿(ASB)とは?

・尿培養で細菌が検出されても、発熱・排尿時痛・頻尿・腰痛などの症状が全くない状態を指します。
・高齢者ではよく見られる状態であり、必ずしも感染症とは言えません。

2. ESBL産生菌とは?

・ESBL(基質特異性拡張型βラクタマーゼ)産生菌は、通常のセフェム系抗菌薬に耐性を持つ菌です。
・主に大腸菌やクレブシエラ属が該当します。接触感染に注意が必要です。

3. 治療方針

【原則】
・症状がなければ治療(抗菌薬投与)は行いません。

【理由】
・抗菌薬の乱用は耐性菌をさらに増加させるリスクがあります。
・無症候性細菌尿を治療しても、将来の感染症を予防する効果はありません。
・抗菌薬による副作用(下痢、腎機能障害など)も懸念されます。

4. 例外的に治療が必要な場合

・泌尿器の手術(特に出血を伴う処置)を予定している場合
・重度の免疫抑制状態(例:臓器移植後 など)
・症状が出現した場合(発熱、意識障害、頻尿など)

5. 高齢者施設での対応ポイント

・標準予防策と接触感染対策を継続してください(特に手指衛生が重要)
・排泄物、尿器などの共有物品は消毒または個別使用を徹底
・症状の有無を日々観察し、変化があればすぐに報告
・無症候性細菌尿だけで隔離は必要ありません。