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医療トピックス

食と健康

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医学博士とシェフ/ソムリエの健康レシピ

ハーブを使った美味しい料理にワインを添えて病気の予防

<全12回>

第1回:

はじめに/メディカルハーブとビオ・ワイン

はじめに

 最近は疾病の予防や健康維持に関心を持つ人が増えています。ジョギング愛好家やフィットネスクラブ利用者は年を追うごとに増え、特定保険用食品(特保)の市場規模は10年間で倍増しました。今皆さんが着目しているのは、日本人の平均寿命よりも健康寿命ではないでしょうか。わたしたち一人一人が心豊かに生き生きとした毎日を過すためには、肉体的にも精神的にも社会的にも完全に良好な状態をいかに長く保つかが大事です。急速な高齢化や生活習慣の変化により、疾病の構造が変化し、疾病全体に占める癌、虚血性心疾患、脳血管疾患、糖尿病等の生活習慣病の割合が増加してきました。医療費は伸び続け、熊本を含む九州各県において1人当たり医療費(年齢調整後)は全国平均よりも高額となっています。病気になるということは、その治療費(特に癌治療は高額)や家庭の負担を増大させるだけでなく、会社や社会への貢献という意味からも大きな損失です。

 私たちが働いている聚楽内科クリニックと聚楽コミュニティ倶楽部では、主に介護をあまり必要としない高齢者の方々の暮らしをサポートしています。リゾートホテルのような環境で、元気に人生を長く謳歌していただく、そのために必要なのは「早期発見・早期治療」ではなく「予防・未病」です。

本シリーズは今まであるようで無かった、ホテルやサービス業だとよくあるホスト側(シェフ兼ソムリエ)とゲスト側(客兼医者)が出会うべくして出会い、異色の二人がタッグを組んで生まれました。「予防・未病」をコンセプトにありとあらゆる視点から、時には、フランスの伝統的なエスコフィエの教えに沿った本格的なフランス料理に病気を予防するハーブを加え、その料理に合わせる無農薬、減農薬で育てたビオ・ワインなどヴィンテージ、品種、生産国などワインの情報を提供し、さらにはソムリエのテイスティングコメントや医学博士からの豆知識を取り入れていきます。本格的なフランス料理を食べ、その料理に合ったワインを飲み体が健康になって行く医学博士の診断結果(?)つきです。是非、食生活を美味しく彩り、かつ不死の身体にしてくれるハーブとワイン、その魅力を御堪能ください。

メディカルハーブとビオ・ワイン

メディカルハーブの安全性について

 特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会によれば、メディカルハーブとは、人の体にもともと備わっている自然治癒力を利用し健康管理や病気の予防、治癒をおこなうために、体内に取り込む植物のことを指します。メディカルハーブと医薬品を比べると、その違いがはっきりします(表1)。

表1 メディカルハーブと近代医学の比較

メディカルハーブ 医薬品
成分 多くの成分を含む 主に単一成分
適応 慢性的不調 外傷、緊急の場合など
領域 心身症など 心身症など 多種
作用 穏やかに作用する バランスを回復する 強く作用する 病んでいる部分に直接働きかける
範囲 全身に及ぶ 一点集中、局所的
副作用 適量を守れば副作用は少ない 副作用の可能性がある

 また、ハーブに含まれる成分によっては特定の医薬品との併用が制限されているものがあり、効果を強めたり、弱めたりする場合があります。米国ハーブ製品協会(AHPA:American Herbal Products Association)では、約650種類のメディカルハーブについて安全性を評価し、クラス1~4の4つの段階に分類しています。われわれの健康レシピで各症状(病気)に対して用いるハーブの安全性でも、この分類を参考にさせていただきました。

    クラス1:
    適切に使用する場合、安全に摂取することができるハーブ
    クラス2:
    記載された植物含有成分の使用に関する資格がある専門家(医療従事者)による特別な指示がない限り、以下の使用制限が適用されるハーブ
    クラス3:
    「医療従事者の監督下でのみ適切に使用すること。」というラベル表示を勧告する重要なデータが確認されているハーブ。ラベルには、以下の適正使用情報を記載しなければならず、容量、禁忌、生じ得る有害作用および薬物との相互作用、ならびに本品の安全使用に関する他の関連情報が提供されています。
    クラス4:
    分類のための十分なデータが入手できないハーブ

有機栽培で育てた体にやさしい自然派ワイン

 自然派ワインとは、出来る限り自然のままの製法でつくられたワインで、ビオ・ワイン(bio wine)とも呼ばれます。これは有機栽培で育てた葡萄を天然酵母で醸造するワインです。醸造中も酸化防止剤等の添加を極力抑えています。自然で滋味(じみ)に富み、いつもワインを飲んで頭が痛くなる人でも、この自然派ワインなら頭が痛くなることはありません。事実、瀬尾は以前、職場のレストランで20名様くらいのワイン会を2ヶ月に1度ほど開催しておりましたが、「ワインは好きだけど、ワインを飲むと頭が少し痛くなる」というお客様がいらっしゃいました。さっそくそのお客様にビオ・ワインを勧めてみましたところ、「頭が痛くなることがなくなった」という嬉しいお声をいただいたのです。酸化防止剤が殆ど入っていませんので、飲んでいるうちに空気に触れ、香りや味わいが変化していきます。澱(おり)や濁りがみられますが、これは無濾過、無清澄の証であり、つぶつぶ果汁入りジュースと同じようなものです。澱を飲んでも一切害はありませんのでご安心ください。われわれは、体にもよく、美味しい、この自然派ワインをお勧めするようにしています。