医療トピックス
食と健康
医学博士とシェフ/ソムリエの健康レシピ
ハーブを使った美味しい料理にワインを添えて病気の予防
<全12回>
第2回テーマ:
動脈硬化など生活習慣病
- ハーブ:
- ローズマリー、ホーソンベリー
- レシピ:
- ローズマリーのティー、ホーソンベリーのティー
INDEX
- 動脈硬化など生活習慣病について
- 優れた抗酸化作用を持つハーブ:ローズマリー
- TIPS
- ローズマリーの安全性について
- ローズマリーを使ったおすすめのレシピ
- 心臓の機能を良くするハーブ:ホーソンベリー
- TIPS
- ホーソンベリーの安全性について
- ホーソンベリーを使ったおすすめのレシピ
動脈硬化は日本人死因の第2位である心疾患、そして第4位である脳血管疾患を引き起こします。また寝たきりなど介護を必要とする男性の原因の第1位も脳血管疾患です。このように動脈硬化は現代社会において健康寿命を短くする主要な原因となっています。言いかえれば、この動脈硬化を防ぎ血管年齢を若返らせることで、何歳になっても元気で活動的な生活を送ることができるということになります。
聚楽内科クリニックでは、血圧脈波測定(グラフ1)、総頚動脈エコー検査、ロックス・インデックス検査、さらに心エコー検査を追加して、脳心血管系異常の早期発見・予防・治療を開始しました。平成29年度に血圧脈波測定をおこなったところ(46症例)、実に半数の症例で血管年齢の老化を認めました(グラフ1)。
血管年齢と実際の年齢(実年齢)を比較しました。下段から上段に、血管年齢が実年齢と同じ23名、血管年齢が実年齢より1歳から19歳高い13名、血管年齢が実年齢より20歳から35歳高い10名の平均実年齢(青色)と平均血管年齢(赤色)を示しています。それぞれのグループにおいて実年齢に差は認めませんが、血管年齢には明らかな違いがみられます。
動脈硬化の原因として、喫煙、高血圧症、高脂血症などが知られています。そこで喫煙暦の有無、高血圧症の有無、高脂血症の有無について調べてみました(グラフ2)。血圧脈波検査を受けた中の半数近くが動脈硬化の危険因子ありの症例でした。
そこで次に各危険因子がどの程度血管加齢に関与しているのかを調べてみました(グラフ3)。それぞれの危険因子単独の場合と比べて、危険因子が2つ、さらに3つ存在する症例ほど血管年齢高齢化のリスクが大きくなっています。
グラフ1で示した3つのグループをそれぞれ血管年齢が実年齢と同じ23名(青色)、血管年齢が実年齢より1歳から19歳高い13名(赤色)、血管年齢が実年齢より20歳から35歳高い10名(灰色)で表し、それぞれ動脈硬化の危険因子がどの程度関与しているかを示しています。
ではどのようにすれば、血管年齢を若く保ち、健康寿命を延ばすことができるのでしょうか。禁煙、高血圧・高脂血症治療に取り組むのはもちろんですが、実は動脈硬化その他の生活習慣病予防に効果のあるハーブがいま注目されており、そのハーブを毎日摂取することで体内環境を整えることができるといわれています。今回はそのいくつかをご紹介しましょう。
優れた抗酸化作用を持つハーブ:ローズマリー
- 学名
- Rosmarinus officinalis(ロスマリヌス オフィキナリス)
- 和名
- マンネンロウ
- 科名
- シソ科
- 使用部位
- 葉部
- 花の色
- 薄紫色
- 主要成分
- 精油、フェノール酸(ロスマリン酸、クロロゲン酸、カフェ酸)、フラボノイド(ルテオリン)、ジテルペン化合物(カルノソール、ロスマノール)
- 作用
- 抗酸化作用、血行促進作用、消化促進作用、陽性変力作用
- 適応
- 消化不良、食欲不振、循環不良、関節炎、リウマチ
TIPS
2m程の樹高になる低木です。地中海沿岸が原産です。古くから料理、医療として様々に使われてきました。日本では若さを取り戻すハーブとして、永遠の青年を意味する「万年郎(まんねんろう)」といわれました。学名のRosmarinusは、ラテン語で「しずく」を意味するrosと、「海の」を意味するmarinusの合成語です。officinalisは、「薬用の」という意味のラテン語です。
ローズマリーには様々な効能があります。古くから若返りとして使用されてきたように、優れた抗酸化作用があります。血管神経系に対する強壮作用があり、血液循環を促進する効果に優れます。そのため、代謝を活性し、活力を高め、疲労回復、血行促進、貧血改善に有効です。風邪の引きはじめや過労の際にも使えます。脳の働きの活性にもつながり、記憶力・集中力アップを促します。心身疲労や自律神経失調症にも効果があります。食欲不振、胃アトニー、肝機能の低下、便秘などの消化機能の低下にも利用されます。リウマチや痛風には、湿布や沐浴が推奨されています。このローズマリーに多く含まれているロズマリン酸が、血液の中にある悪玉コレステロール値を下げ、加えて血糖値を下げる効果もあります。このため特に両方の数値に異常がある場合におすすめしたいハーブです。
ローズマリーの安全性について
適切に使用する場合、クラス1に分類されますが、妊娠中及び授乳中使用は避けてください。
ローズマリーを使ったおすすめのレシピ
ローズマリーのティー
作り方:
- 細かくしたローズマリーを熱湯で3分間抽出し、茶こしを使ってカップに注ぎます。
心臓の機能を良くするハーブ:ホーソンベリー
- 学名
- Crataegus monogyna(クラタエグス モノギナ)
- 和名
- さんざし
- 科名
- バラ科
- 使用部位
- 葉部、果実
- 花の色
- 白色
- 主要成分
- サポニン、糖類(ペクチン)、フラボノイド(ルチン、ビテキシン、クエルシトリン)、配糖体、プロアントシアニジン、トリテルペノイド、タンニン、ビタミンC、ビタミンB1、ビタミンB2、コリン、アセチルコリン、カルシウム
- 作用
- 心臓強化作用、血行促進作用、血管拡張作用、利尿作用
- 適応
- ストレス緩和、動脈硬化、高脂血症、冠動脈性心臓病
TIPS
心臓の機能を良くするホーソンというハーブがあります。別名を西洋サンザシと呼ばれ赤い実をつけます。ホーソンはヨーロッパから北アフリカ、インドが原産地とされるバラ科の植物で、千種類以上の種類があり、ホーソンベリー、セイヨウサンザシなど国、地域によって色々な名前をもっています。高さ3~10mほどの落葉樹で5月頃に白い花を咲かせ、秋には明るい赤紫色の実をつけます。
古代ローマ時代には神聖なハーブとみなされ、宗教的な儀式に利用されていました。ホーソンには非常に硬くて丈夫なとげがあり、あのキリストが処刑された時のイバラの冠はホーソンの枝で作られていました。また悪霊を防ぐということで、当時の人々は家の入口にホーソンを植えていました。中世にはとげのあるホーソンを家畜が逃げ出さないようにフェンスの代りに使っていたという記録が残っています。
古くギリシャの医師はホーソンを心の病のために使っていました。そして7世紀頃の中国では同じ種類のオオサンザシを高血圧、動脈硬化など心臓に係わるトラブルの治療薬として利用するなど、何世紀もの間、西洋と東洋で高い評価を得ていました。中世には利尿や不眠のための治療薬として珍重されましたが、19世紀になって心臓病の治療薬として再びヨーロッパで人気がでました。
このホーソンには、血液を浄化する効果のあるフラボノイドや、リポニン、タンニンといった有効成分が豊富に含まれています。心臓の強心作用があり、具体的には冠状動脈を拡張し血流を改善します。したがって血管の壁が劣化することで滞った血流を改善し、心拍数を整えるハーブといわれています。
ホーソンベリーの安全性について
適切に使用する場合、クラス1に分類されますが、妊娠中及び授乳中使用は避けてください。
ホーソンベリーを使ったおすすめのレシピ
ホーソンベリーのティー
作り方:
- 細かくしたホーソンベリーを熱湯で5分間抽出し、茶こしを使ってカップに注ぎます。