第2回:ウイルスと共に生きる時代 ― 人類と感染症の長い付き合い ―
「もう二度と、あんなパンデミックは起きないでほしい」
そう願うのは、私たち誰もが同じでしょう。
しかし、私たち医療に携わる者から見ると、
ウイルスと人類の関係は、“戦い”というより“共存”に近いのです。
■ ウイルスは“地球の先住者”
私たちが気づくよりずっと前から、
ウイルスはこの地球に存在していました。
むしろ、人類よりもはるかに古く、
地球上のすべての生命と何らかの形で関わってきた存在です。
細胞の進化に、ウイルスの遺伝子が関与していた――
そんな研究結果も今では珍しくありません。
つまり、ウイルスは「敵」ではなく、「古くからの付き合い」でもあるのです。
■ “戦う免疫”から“調和する免疫”へ
新型コロナウイルスが猛威をふるった中で、
免疫という言葉が一般の方々にも広まりました。
けれども、私たちの免疫は常に「戦って」ばかりではありません。
ある程度のウイルスや細菌と“共存”するバランスを保ちながら、
自らを保っているのです。
そのバランスを整えるカギとなるのが――腸内環境。
そして、その腸内細菌や免疫細胞を支えているのが、実はミトコンドリアなのです。
ミトコンドリアは、体の中の“エネルギー工場”ですが、
同時に「炎症を起こすか、鎮めるか」の司令塔のような役割も果たしています。
■ 医学の未来は「共に生きる」視点から
感染症と完全に無縁の時代は、おそらく訪れません。
しかし、それを過度に恐れるのではなく、
体の中の“共生のバランス”を整える医学が、これからの時代のカギになると私は考えています。
ただ病原体を「排除する」だけでなく、
“受け入れ、整え、立ち向かう”身体を育てること。
それが、未来の医療の姿ではないでしょうか。
■ 終わりに
パンデミックは、医学の在り方を問い直す大きな出来事でした。
でもその中から、私たちは「見えないものを見る力」も得たはずです。
ミトコンドリア、腸内環境、免疫の調和――
そうした体の中の“見えない共存”に目を向けることが、
次の時代を生き抜く大きなヒントになると、私は信じています。