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院長日記

第4回:戦争が医療を進化させたという皮肉 ― 壊すことで見えた、“命を守る技術”の進歩 ―

武本 重毅

医療は、つねに「命を守るための営み」だと、私は信じています。

しかし、歴史をたどると、
医療が最も進歩した時代は“戦争の時代”だったという皮肉な事実に、私たちは直面することになります。

■ 戦争は“命を壊す”技術だけを生んだわけではない

第一次世界大戦では、外傷外科と輸血技術が飛躍的に発展し、
第二次世界大戦では、抗生物質(ペニシリン)の大量生産と、精神医学の進歩が見られました。

ベトナム戦争では、ヘリによる医療搬送(MEDEVAC)が導入され、
湾岸戦争やイラク戦争を経て、遠隔医療や義肢再建、PTSDへの理解も深まりました。

つまり、壊すための戦争が、“命を守る技術”を進化させてきたのです。

■ しかし、それは本当に望ましい進歩だったのか?

こうした医学の発展は、確かに多くの命を救ってきました。
でも、その背後には無数の犠牲と痛みがあります。

私は医師として、こう問いかけたいのです。

「命を守る技術は、平和な時代にも進化できるはずではないか?」

戦争がなくても、予防医学、再生医療、細胞工学、ゲノム解析――
今の時代には、これだけの可能性があるのです。

■ 壊すのではなく、再生する技術へ

21世紀の医療は、「破壊のための技術」ではなく、
「再生と修復のための技術」へと大きく舵を切ろうとしています。

たとえば――
・老化した細胞の機能を再活性化するNMN
・エネルギー代謝を高める5-ALA
・酸化ストレスを除去する水素療法

これらは、私が提唱する「アンチエイジング3本の矢®」としてもお伝えしてきましたが、
まさに“壊れた細胞を修復し、命を再生する”アプローチです。

そしてその中心にあるのが、ミトコンドリアの回復と活性化なのです。

■ 終わりに

戦争が医療を進化させたことは、否定できない歴史です。
でも、これからの未来は、破壊を伴わずに進化できる時代にしなければなりません。

命の尊厳、平和の価値、そして再生の科学――
それらが三位一体となって初めて、本当の“ヒューマン・メディスン”が成立するのだと、私は信じています。

次回(最終回・第5回)は、
「未来をつくるのは、“見えない力”に気づいた人たち」
をテーマに、ミトコンドリア、腸内細菌、分子栄養学といった“体の中の小さな力”に光を当てていきたいと思います。

Author:

武本 重毅

聚楽内科クリニックの院長、医学博士。