Director's blog
院長日記

伝染病(communicable diseases)と非伝染病(non-communicable diseases)の二面性

武本 重毅

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 昨日は看護学生にHIVやHTLV-1などウイルスの話をしたので、その考えをまとめてみました。

 ヒトのレトロウイルス感染症は伝染病(communicable diseases)である。特にHIVは、世界中に広がり、その感染から10年以内に患者にAIDSを発症させ、患者を死に至らしめると恐れられたウイルスである。しかしながら今、抗レトロウイルス治療の進歩により、人類はそのエイズ(AIDS)でさえ克服しようとしている。たしかに先進国米国で始まった治療の取り組みは、2006年には効果を現した。そうではあるが、いったん感染したHIVから逃れることはできないため、PLWHA(People Living With HIV/AIDS)と呼ばれる長期生存者が増え続けている。そこで新たに問題となってきたのが、癌、心血管障害、肝障害など高齢化がすすむ患者の、健常高齢者と同じ病態であり、抗レトロウイルス治療を続けていれば、非感染者と同様にこれらが主な死亡原因となっている。すなわち伝染病への対応から非伝染病(non-communicable diseases)への対応への変化が必要になっている。そしてもう一つのヒトレトロウイルスであるHTLV-1感染と、その疾患である成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)は、まさに伝染病から数十年を経て、患者は非伝染病である悪性腫瘍を発症するという病像の二面性をもつ疾患の典型である。

Author:

武本 重毅

聚楽内科クリニックの院長、医学博士。