Director's blog
院長日記

カラスをみかける風景

武本 重毅

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 7年前の今ごろ書いた日記を振り返ると、何ら変わらない日常があった。先日家内とふたりでフランス料理のケルンよしもとに恒例の牡蠣を食べに行こうと、日曜日の夕暮れ時に歩いた花畑町界隈で、同じように空を覆うように飛び回り、電線の上にびっしりと並んでいるカラスたちを目にして驚いた。以前と変わらない冬の風景がそこにあった。まだまだ予期せぬ何かが起こるのかもしれないという思いが頭をよぎった。

「今日はカラスがいない」 2012年12月6日
 昨日はタイでおこなった私達の結婚記念日だった。夕方午後6時過ぎには仕事を切り上げ、タクシーを走らせ、熊本大学医学部で講義を受けている家内を乗せ、ケルンよしもとへと向かった。この寒い季節になると美味しい牡蠣を出してくれる、熊本で唯一のフランス料理店である。フォアグラも最高で、家内は、この店のものが一番と言う。私は、シャンパン、カルヴァドスを楽しんだ。
 結婚3年目の2日目である今日、気づいたのは、あれだけ熊本の銀座通りに集まり、職場(熊本医療センター)あるいは熊本城の上空を飛び回っていたカラスが、急に姿を見せなくなったことだ。どこに行ったのか。眩い太陽が照らす朝だ。

「100羽のカラス」 2012年12月4日
 昨日あたりから、早朝に多くのカラスが空を舞う姿をみかけるようになった。100羽以上はいると思われる。早朝の寒い空を飛ぶのはどうなのだろう。寒くないのであろうか。
 それぞれが光輝く黒羽をまとい、美しく、かつ勇ましく見える。そしてその数は明らかに日に日に増えている。我々と共存しながら次の世代環境を担っていくのかもしれない。

「カラスの生き様-熊本市中央区銀座通りの場合-」 2012年9月30日
 朝の通勤で熊本市繁華街を抜けて仕事場に向かっている。そこで目にするのが、真っ黒で大きなカラスたちである。かれらは堂々と車道に降り立ち、歩きまわっている。一体何をしているのだろうと思い眺めてみると、昨夜のうちに道路脇に出された生ごみを漁っているのだ。熊本一の繁華街、美味しいレストランが立ち並ぶ通りから排出された残飯は、さぞかし栄養価も高く美味なのであろう。人間でいえば、豪華なディナーを楽しんでいる現代の富裕層のように、かれらの体格は堂々とした風格さえ感じさせる。しかも通りに散乱したゴミを食べて清掃にも協力してくれているわけだから、人間にとってまんざら悪い奴ではないのかもしれない。これが新しい食物連鎖であり、人獣共存の形なのであろう。一方でこのように人間に依存して生きる生物をsynanthropeという。カラスのために良い環境を作っているのが、実は人間なのである。

Author:

武本 重毅

聚楽内科クリニックの院長、医学博士。