Director's blog
院長日記

イノベーション思考を身につける(後半)

武本 重毅

カテゴリー: 

一流の頭脳の磨き方
山崎裕二
岡田美紀子

 

失敗しても叩かれても

「次のチャレンジ」を考え続ける

 

組織の人事制度として必要なのは

「チャレンジ」という

キャリア自体を評価する仕組みを構築することです。

 

「新規事業の部門で3年やれば、部長職に昇格させる」

などのキャリアパスを与えている会社もあり、

高い報酬を保障するケースも多くみられます。

 

新規事業とは、

もともとが失敗する確率の高いものです。

 

だからこそ、

「結果だけ」を評価するのではなく、

「チャレンジそのもの」を評価の対象として、

必要な人材を集めやすくしなければなりません。

 

極端に言えば、

失敗だって評価の対象にするということです。

ところが、

これは日本人や日本企業にとって、

最もなじみにくい発想と言えるでしょう。

 

欧米に比べれば

「チャレンジそのものを評価する」

「仮に失敗しても、挑戦したこと自体に価値がある」

という発想が

日本には決定的に不足しています。

 

発想がないのですから、

当然、仕組みや制度も不十分です。

 

 

「革新的なビジネスモデルを必要としている企業」

「それほど差し迫った状況にはない企業」

があります。

「その違いをどのように見極め、判断するか」も、

ビジネスエリートにとって大事な学びの1つとなります。

 

 

まず大きな指標となるのは

「商品そのものが複雑になりすぎてはいないか?」という視点です。

例えば

一般的な家電製品においては、

商品が複雑になりすぎたり、

その価格が高騰してくると、

市場における勝者になるのは決定的に難しくなります。

理由はシンプルで、

「破壊的イノベーター」が出現してくるからです。

 

破壊的イノベーターとは、

従来とは違った尺度で

ズバ抜けた商品(低品質だが圧倒的な低価格など)を開発し、

「これまでのマーケットのあり方を一変させてしまう存在」のことです。

 

多くの消費者は、

家電製品に

それほど多くの役割や高い性能を

求めてはいないからです。

 

このように

商品やサービスが

複雑になりすぎたり、

コストがかかりすぎる状況になってきたら、

 

「その商品やサービスの見通しが暗い」

ということを

いち早く認識しなければなりません。

 

そんな時、

さらなる高機能(という名の複雑性)を追求したり、

自社商品の優位性をPRすることだけに躍起になっていたら、

マーケットからは完全に取り残されます。

 

これは紛れもなく、

革新的なビジネスモデルが必要とされている状況です。

 

 

革新的な技術の登場によって、

業界のあり方がまるっきり変わってしまう

 

というケースもあります。

 

 

どんな業界でも、

1つの技術革新が起これば、

それに応じて次々と技術革新が求められるようになるのです。

 

 

ただし、

ここで視野が狭くなりすぎてもいけません。

 

既存のマーケットで技術革新が起これば、

多くの人が

「同じフィールドで、さらに上を行く技術を開発しよう」と思うでしょうが、

それは唯一無二の方法ではありません。

 

例えば

富士フイルムのように、

従来の市場を捨て、

全く別のフィールドで勝負に出る

という方法もあることを忘れてはいけません。

 

彼らがユニークだったのは

「商品やサービス」

「業界」

にとらわれるのではなく、

自分たちが持っている技術そのものに着目し、

 

「すでにある技術を生かすにはどうしたらいいか」

という問いを、自分たちに投げかけた点です。

 

 

富士フイルムのように

「業界に技術革新が起こり、マーケットが一変する(あるいは消滅)」

という危機に陥ったときは、

 

間違いなく、

自社でも技術革新が必要な瞬間です。

 

何とかして、

ライバルに対抗しなければならないと誰もが思うでしょう。

 

ただし、

そんな切羽詰まった状況の時こそ、

「本当にこの業界で勝負するのが適切なのか」と

再検証し、

 

「自社の技術を生かして、他の業界で勝負することはできないか」という

柔軟な発想を持つことも必要なのです。

 

 

事業をやるに際して

「今、このマーケットに十分な金が流れているのか(流れてくるのか)」

という視点は極めて重要です。

 

顧客のニーズや課題に対して、

全く異なるアプローチによって

「従来にはなかった解決策(ソリューション)を提供するプレイヤー」が業界内に現れた時も、

 

間違いなく、

何らかの変革が必要な瞬間でしょう。

 

 

最後にもう一つ、

 

「商品やサービスがコモディティー化(どれを買っても大差ない状態)している」状況も、

 

早急な技術革新が必要とされるシチュエーションです。

 

どんな商品、

サービスにおいても

「新しさ」がある事は差別化が効きますが、

 

後発商品がある程度出そろい、

マーケットが成熟してくると、

どうしたって「コモディティー化」が襲ってきます。

 

このような状況になると、

 

熾烈な価格競争に陥りやすく、

企業はどんどん苦しくなっていきます。

 

だからこそ、

企業の舵取りを担うビジネスエリートとしては、

 

常にイノベーションの方法を学びながら、

 

いかにしてライバルが真似できない技術革新をするか、

 

そして適切なビジネスモデルを作るかを模索し続けなくてはならないのです。

Author:

武本 重毅

聚楽内科クリニックの院長、医学博士。