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院長日記

お酒を飲みながらつくる健康な体(2020年2月12日 DNS健康講話)

武本 重毅

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昨日DNS本部にお邪魔して健康講話を開催しました。
その内容を要約してご紹介します。

 

今回は、「動脈硬化症」、「禁煙のすすめ」に続いて、3回目の健康講話です。

前回、喫煙は百害あって一利なし、

単に煙が悪いのではなく、

中に含まれている

4000種類の化学物質、200種類の有害物質、そして60種類の発がん物質

が問題なのだということをお話しました。

 

実は、飲酒時に喫煙すると、その有害物質の吸収を高めてしまうのです。

まず皆さまに申し上げたいのは、飲酒する日には喫煙しないでいただきたいということです。

 

 

体に取り込まれたお酒の行き先と変化

お酒を飲むと、まず胃を通過する間にアルコールの20%が吸収されます。

その後、残りの80%が小腸で吸収され、血中のアルコールは肝臓へと送られます。

 

肝臓には2種類の分解酵素があり、

最初のアルコール分解酵素のはたらきによりアルコールはアセトアルデヒドになります。

実は、このアセトアルデヒドはやっかい者で、

二日酔いをおこし、

頭痛や赤ら顔の原因となるだけでなく、

発がんの原因物質でもあります。

そのアセトアルデヒドを分解するのが2番目の酵素です。

アセトアルデヒドを無害な酢酸と二酸化炭素に分解します。

 

つまり、この2番目の分解酵素のはたらきが強ければ、

お酒に強い体質であるというわけです。

 

分解されたアルコールは、最終的には尿や汗、そして呼気のとして体外へ排出されます。

 

 

身体に及ぼす影響

まず脳に対する障害について考えてみましょう。

第一段階では、理性がはたらかなくなり、すなわち大脳皮質が抑えていた動物的な欲求が前面に出るようになります。

第二段階では、海馬など記憶をつかさどる部分に影響がおよび飲酒している間の記憶がとんでしまいます。

さらに第三段階では、運動をつかさどる小脳に影響がおよび、平衡感覚がおかしくなり、千鳥足のような症状があらわれます。

そして、脳全体、特に脳幹部にまで影響がおよぶと呼吸や血圧が障害され、最悪の場合には死亡することもあります。

 

 

肝臓は、アルコールを分解する酵素を産生する重要な臓器です。

しかし、神経が走っていないので、アルコールの害を受けても痛くもかゆくもありません。

だからこそ問題なのです。

人間ドックや健診で血液検査ならびに腹部エコー検査を受けてみるしか異常を自覚する方法はありません。

アルコールによる肝細胞障害が進むと

まず中性脂肪が産生され、脂肪肝の状態になります。

さらにアルコールが肝細胞を痛めつけると肝硬変となり、

最終的には肝細胞癌が発生することになります。

 

繰り返しますが、

痛みなどの自覚症状がありませんので、

肝臓のことを気にしながら、毎日の飲酒、生活習慣を整えていくことが大事です。

 

 

膵臓は、

胃の裏側あたりに位置する臓器で、

炭水化物、タンパク質、脂肪をそれぞれ分解する酵素を産生します。

アルコールにより膵臓が障害されると、糖尿病などの代謝異常、

さらに急性膵炎となれば、

通常は消化管の中に分泌して食物を分解する酵素が、消化管の外、お腹の中に漏れ出て自身の臓器を消化してしまうような状態になってしまいます。

これは、強い腹痛、背部痛が出現し、救急治療が必要となります。

 

 

飲酒は喫煙とはちがい、

止めてしまう必要はありません。

適量*であれば、体にとって薬のように良いはたらきがあります。

全く飲まないよりも、心筋梗塞や脳梗塞になるリスクが低くなるのです。

 

しかしながら、飲みすぎると良くありません。

心筋梗塞や脳梗塞になるリスクが高まり、

動脈硬化が進んで、腎臓の機能も悪くなります。

腎臓には体の中で最も細い動脈が集まって体の中の不要な物質を尿にろ過して排出していますので、

その血管がダメージを受け

腎臓の機能が落ちていくことになります。

腎臓もまた石ができない限りは痛みもありませんので、

気づいたときには週に3回の透析が必要となり、不自由な生活を強いられるということもあり得ます。

適量*とは、日本酒1合、ワイン2杯(200ml)、ビール500ml、ウイスキー60ml(ダブル)くらいです。

 

 

お酒の種類(含有成分)

アルコールとそのカロリーについても知っておく必要があります。

ご飯やパンなど主食の炭水化物の場合1gあたり4kcalですが、

脂肪では9kcalにもなります。

そして、アルコールは7kcalです。

お酒の飲みすぎによる肥満に注意しましょう。

 

お酒は、その製造方法により、大きく分けて2種類あります。

 

蒸留酒は

アルコールを一旦気化して、再度液体にするため、度数が高く栄養成分含まない酒です。

しかし、例えばウイスキーのように、樽で寝かせている間に後から樽の成分(ポリフェノール)が溶け出てくるという場合があります。

 

ポリフェノールに関しては、

例えば赤ワインを毎日2杯飲めば心筋梗塞になりにくくなると言われるほど、

世界中の医学研究でその効果が証明されており、

抗酸化作用が動脈硬化を予防し、がん化も防ぎます。

 

喫煙が動脈硬化の原因ですから、喫煙家の方は飲むお酒をワイン(赤ワイン)に換えてみてはいかがでしょうか。

醸造酒には、

様々な栄養成分が含まれています。

中でもビールの場合、原材料のホップはハーブの一種ですし、

ポリフェノール、ビタミンB群、ミネラル、タンパク質、食物繊維というように様々な成分を含み、

古くから栄養剤として重宝されてきました。

もし旅の途中で食べ物に困ったときでもビールさえ飲んでいれば何とかなるかもしれません。

 

また、アルコール多飲により起こる貧血で、

葉酸欠乏が原因の場合があります。

昨年末に聚楽内科クリニックを受診したサラリーマンの方がそうでした。

ビタミンB群の欠乏により血管壁が弱くなり鼻血が止まらなくなり、

血液検査でMCVが大きくなるような貧血を認めました。

禁酒し栄養状態(葉酸状態)を回復させることで、貧血も鼻出血も治りました。

 

それぞれのお酒には

以下に示すような成分が含まれているので、

体の栄養状態を考えながら上手に飲酒してみてください。

醸造酒とそれぞれに含まれる栄養
日本酒 :アミノ酸、ビタミンB6
赤ワイン:ポリフェノール(レスベラトロール、アントシアニン、タンニン、カテキン)
ビール:ポリフェノール、ビタミンB1,B2,B6,B12、イノシトール、葉酸、パントテン酸、カルシウム、カリウム、マグネシウム、リン、ナトリウム、タンパク質、食物繊維

 

痛風にならないように、しかし尿酸は必要

最後に、

最近プリン体を含むビールを避ける人がいるようです。

確かにプリン体の代謝産物は尿酸ですが、実は、ビールに限らずアルコール摂取することで尿酸値は上がるのです。

 

では、どのようにすれば痛風にならなくて済むのでしょうか。

尿酸は尿から排出されます。

しかもアルカリの状態では結晶をつくりにくいため、

アルカリ化して尿を増やすようにすればよいわけです。

水を十分に摂取して、野菜や海草などアルカリ性食品を摂るようにしましょう。

ただし、お茶やコーヒーは利尿作用があるので、

かえって脱水に傾き尿酸値が高くなってしまいます。

 

飲酒後の運動や入浴、サウナなどはもっての他です。

 

スポーツドリンクは糖の吸収を早めてしまいますので、

高血糖となり血管内は脱水状態になってしまいます。

 

注意しましょう。

Author:

武本 重毅

聚楽内科クリニックの院長、医学博士。