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院長日記

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予防および対策

武本 重毅

カテゴリー: 

2020年3月6日
特養老人ホーム風の木苑、衛生委員会にて

聚楽内科クリニック院長 武本重毅(たけもと しげき)

 

I. 日本全体で取り組む感染症対策

今日お話するのは、中国の武漢市から世界に広がったとされるウイルス感染です。

今や世界で85カ国で9.7万人が感染し、3300人以上が亡くなっています。

日本でも最近は毎日30人以上の新たな感染者が報告されるようになりました。

 

初期の症状は、ウイルス感染症を疑います。

もちろん一般的な風邪のウイルス感染症と区別できません。

しかし、やはり、現在の状況であれば、まず疑うべきなのは新型コロナウイルス感染症です。

その80%の感染者は軽症で、

通常の風邪症状で、

それ以上の症状はありませんので、

喉の痛みや発熱に対する市販薬などを用いた対症療法で治療します。

 

ただ、

今、国をあげて問題となっているのは、

残りの20%が重症化し、

人工呼吸器や人工心肺装置まで必要になる症例があり、

さらには高齢者や基礎疾患をもつ患者で死亡率が高いということです。

 

また、未だ治療薬やワクチンが開発されていません。

 

このため、

高齢化社会である日本において、

いかに感染しないようにするか、

ということが最重点課題となっています。

 

ついこの前まで、

日本の経済や生産性を維持するために、

定年制の見直し、

70歳まで働けるように制度見直しを、

などと言っていた、正にその世代が窮地に陥っているわけです。

 

 

そして、今や

世界的に経済の停滞をもたらしつつあるこの感染症です。

 

風の木苑のように、

高齢者のケアを仕事とする職場のおいては、

感染者が出れば、入所者だけでなく従業員にとっても死活問題となります。

 

この大問題を乗り切るためにはどうすればよいか?

これまで、インフルエンザウイルスやノロウイルス感染対策で培ったみなさんのノウハウが、その役に立つのです。

 

 

II. 高齢者施設としての対策

では、今回の新型コロナウイルス感染症について、

これまで明らかになってきたことを話します。

まず、みなさんは、

クラスター(Cluster)という言葉をご存知ですか?

 

クラスターを挙げてみましょう。

武漢市、イタリア北部、韓国、北海道

クルーズ船、飛行機、バス

クラブハウス、コンサート会場、宗教集会、販売促進会

スポーツジム、ホットヨガ、病院

そして家庭

閉鎖された空間に集まることが、感染のリスクを高めます。

 

 

そして、スプレッダー、スーパー・スプレッダー(super-spreader)という言葉もあります。

クラスターを形づくるとき、その中心となる感染者のことです。

 

では、どのようにして感染はおこるのでしょう。

感染経路は、

飛沫感染

接触感染

といわれています。

 

感染を受ける側は、

皮膚そのものはバリアとしてはたらきますので、

その他の場所、

粘膜から身体の中へウイルスが侵入することになります。

まず鼻腔、口腔です。

これは飛沫として空気中に散布されたウイルスを含む液を

吸い込んだり、

付着したりする場合、

さらには

手指に付着した手指で鼻の粘膜を触ってしまった場合などです。

 

その他、目の結膜からの感染も言われています。

目からの感染を防御するため、

コンタクトレンズをやめてメガネを着用するようにしましょう。

 

 

感染者が出た場合、

政府の方針では、2週間の隔離が必要です。

 

つまり、2週間を経過し検査を受けて陰性化すれば、

隔離を解くことができるということになります。

 

通常のウイルス感染による風邪やインフルエンザであれば、

1週間くらいで治ります。

 

しかし、万が一、

それ以上症状が続いたり、

37.5℃以上の発熱が続いたり、

息苦しさなどの症状が出るようであれば、

「帰国者・接触者相談センター」に電話します。

 

通常はこれらの症状が4日続いたらとなっていますが、

高齢者などでは2日続いたら連絡できます。

 

そして、「帰国者・接触者相談外来」を受診し、

新型コロナウイルスの検査を受けることをお勧めします。

 

高齢者施設の場合には、

保健所に連絡して、

指示を仰ぎましょう。

 

院内感染、

施設内感染は

緊急事態ですので、

 

今巷で言われているような検査拒否ということは絶対にあり得ません。

 

 

ウイルス感染に対しては、

アルコール消毒と

イソジン消毒が

効果的です。

 

予防のためには、

アルコールは身体の外、

手洗いの後の手指消毒や

手が触れる場所の消毒に使います。

 

イソジンは、

イソジンガーグルを購入していただいて、

薄めてうがいや口腔内ゆすぎ、

さらには原液で

コップや歯ブラシの消毒に使用してください。

 

そして、もしも感染者が出たら

 

個室管理とし、

ガウンテクニックを行いましょう。

 

また排泄物から、

さらにはペットからも、

ウイルスを検出したという報告があります。

 

環境汚染に関しては、

ノロウイルス対策と同様、

次亜塩素酸(ブリーチ)を使用しましょう。

 

 

インフルエンザウイルスであれば使用できる

タミフルの予防投与

のような手をうつことができません。

 

したがいまして、

何度も言いますが、

ノロウイルスへの対策を応用し、

 

さらに症状の変化だけでなく、

14日という期間は個室管理とし、

 

検体を提出し、

検査が陰性になるのを確認してから、

それを解除するかどうか判断するようにしましょう。

 

もちろん他の入所者や職員の検査も行われます。

 

 

従業員が外で感染した場合には、

少なくとも14日間は出勤停止にしましょう。

 

中国武漢市のように

徹底した感染対策ができれば

コントロールできるのでしょうが、

 

日本では

クラスターに居た人が動き回っています。

 

それを制止することなど

到底できるはずもありません。

 

これからも、

まだしばらくは、

新型コロナウイルス感染の拡大が続くという心構えが必要です。

Author:

武本 重毅

聚楽内科クリニックの院長、医学博士。