新型コロナウイルス感染拡大、そしてロシアのウクライナ侵攻による経済危機
カテゴリー:
経済通産省の通商白書2020によれば、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、世界は戦後最悪の経済危機に直面しています。これに現在おこっているロシア軍のウクライナ侵攻をかけ合わせて、今後の世界経済とわれわれの生活に与える影響について考えてみましょう。
コロナショックでは供給面からの経済停滞が発生しました。人同士のコミュニケーションの制限、人の移動の停滞により生産活動や物流が止まり、物資の不足が生じました。国際分業の進展により、国境を越えるサプライチェーンの途絶も発生。また、ロックダウン(都市封鎖)や営業自粛に伴って、不要不急のエンターテインメントサービスやレストランのイートイン営業も停止。そこでウクライナ危機が勃発し、ロシアへの経済制裁により、原油価格は上昇を続けています。経済産業省資源エネルギー庁によれば、日本は輸入原油のうち約6%を、輸入天然ガスのうち約9%をロシアから輸入しています(2017年)。それだけではなく、日本はロシアにおける石油・天然ガスの開発プロジェクトにも参画しているのです。そう簡単に縁を切ることもできません。多くの資源を外国に依存しなければならない日本は苦しい立場にいます。
また、需要面からの経済停滞も発生。感染拡大の抑制のための外出制限や自粛、渡航制限の導入などに伴い、観光や宿泊、航空など、人同士が接点を持つ対面サービスでは前例の無い規模で需要が縮小しました。農林水産省によれば、日本からウクライナへの主な輸出品は、自動車、ゴムタイヤ及びチューブ、二輪自動車類などです(2019年)。今の状況は日本の自動車業界には大きな痛手となるでしょう。
このようにコロナショック、それに続くウクライナ危機はは需給の両面のショックが相互作用して経済悪化が深刻化するものであり、主に供給面に影響した東日本大震災や主に需要面に影響した世界金融危機のような過去の経済危機とは異なる、全く新しい種類の経済ショックになると考えられています。
このままの状態ではサプライチェーンが途絶するでしょう。
サプライチェーンの構成要素である、①効率的な生産体制(少ない在庫、コスト競争力のある海外での集中生産)、②陸海空の機動的な物流、③人の円滑な移動において、供給途絶リスクが顕在化してきました。
新型コロナウイルスの感染拡大に伴って明らかになったサプライチェーンにおける生産体制、物流、人の移動という要素は、経済性・効率性とリスクの両面を再認識させるものとなりました。そしてロシアのウクライナ侵攻により、この状況はさらに悪化しています。
日本円への信頼が揺らぎはじめており、これまでにないほど円安が進んでいます。
ロシアを支援する中国、これに対抗する米国とヨーロッパ諸国という図式の中、日本の孤立感が高まっています。日本が生き残るためには、米国のみに依存するのではなく、結局は中国やロシアを含むほかの国々にも依存し続けていかなければならないようです。