Director's blog
院長日記

21世紀最大の危機(自論)

武本 重毅

新型コロナウイルス感染パンデミックの影響により世界は第二次世界大戦後最悪の経済危機に直面しています。そして、これに続く現在のウクライナ危機から第三次世界大戦へと加速する世界的な混乱へと、時計は動きはじめました。

 

コロナショックでは供給と需要の両面から経済が停滞しました。人同士のコミュニケーションの制限、人の移動の停滞により生産活動や物流が止まり、物資の不足が生じました。国際分業の進展により、国境を越えるサプライチェーンの途絶も発生し、例えば自動車生産の中断を余儀なくされました。また、ロックダウン(都市封鎖)や営業自粛に伴って、不要不急のエンターテインメントサービスやレストランのイートイン営業も停止となり、サービス業は多大な損失を被りました。そこからの回復を期待して始まった2022年ですが、なんとウクライナ危機が勃発。新型コロナウイルス感染が完全に収束せぬまま世界的危機は次の段階へとコマを進めることになったのです。ロシアへの経済制裁および戦争準備により、原油価格は上昇を続け、電力などエネルギー消費節約が課せられるようになります。昨日ロシア外務省は日本との平和条約締結交渉を拒否するとともに事実上北方領土はロシアのものであるという立場を鮮明にしました。もしロシアが北方から侵攻すれば、日本は、ひょっとすれば朝鮮半島やベトナムのように、北東をロシアと北朝鮮、南西を米国に引き裂かれるかもしれません。しかし、今のロシアは中国やインドやトルコ、そしてシリアとともに、ユーラシア大陸における覇権を確立することの方が魅力的なのでしょう。

 

ロシアはウクライナ侵攻をやめません。そのロシアを欧米諸国は止めることができません。ウクライナは壊滅的な状態にありますが、これはウクライナだけに留まることでしょうか。なぜウクライナの領土をロシアは欲しがるのでしょうか。

ウクライナ危機の問題は西側諸国に波及しており、そのひとつが移民問題です。ポーランドは、第二次世界大戦ナチスドイツとソ連に分割占領され、大戦後ソ連に組み込まれましたが、1989年9月にソ連圏で最初の非社会主義国となりました。これまでの歴史から、今回のウクライナ難民を積極的に受け入れています。しかし、ここで思い出して欲しいのは、昨年のベラルーシ発移民危機です。2021年欧州連合(EU)がベラルーシ基幹産業への経済制裁に踏み切った後、その報復として、ルカシェンコ大統領はベラルーシに集めたイラクやシリアからの移民を意図的に、ポーランドやリトアニアなどEU加盟国に向うように追い出したといわれています。この時ベラルーシは関与を否定し、越境者を虐待しているとEU側を非難しました。これは移民らを「兵器」として使う「ハイブリッド攻撃」と呼ばれました。

そして今、ポーランド、スロバキア、ハンガリーなどがウクライナからの難民を移民として受け入れられていますが、その数は膨大なものになりつつあります。はたしてポーランドでは、それだけの移民を支援するだけの(金銭的)余裕があるのでしょうか。今回の人道的援助が、次にウクライナ周囲への経済的負担となり、ロシアならびにベラルーシからの圧力がおよぶことになるのではと心配です。

そして、ロシアの本当の目的はEU諸国への力による侵攻ではないでしょうか。これを裏付けるかのように、北大西洋条約機構NATO加盟国の中、米国とEUを離脱した英国はウクライナからの移民受け入れに消極的な態度をとっているようです。

Author:

武本 重毅

聚楽内科クリニックの院長、医学博士。