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院長日記

新型コロナウイルスだけでない注意すべき感染症:その③ 天然痘

武本 重毅

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新型コロナウイルス感染パンデミックの影響により世界は第二次世界大戦後最悪の経済危機に直面しています。そして、これに続く現在のウクライナ危機から第三次世界大戦へと加速する世界的な混乱へと、時計は動きはじめました。

 

ここにきてロシア軍のウクライナ侵攻はこう着状態となりました。ロシアは核兵器の使用をチラつかせていましたが、それは容易なことではありません。そこで浮上してきたのが生物兵器の使用です。特に有効なのは、有効なワクチンが存在しており、自国の兵士はワクチン接種による免疫を獲得してから、相手国の免疫をもっていない兵士に感染させるという方法です。その中でも有力視されているのが、天然痘です。

 

天然痘は古くは日本で平城京の時代に大量の死者をもたらしました。しかし神仏に祈るしか方法がなく、東大寺の大仏を建立したのでした。その後15世紀の大航海時代にはスペインによるアステカ帝国(現在のメキシコ)征服やインカ帝国(現在のペルーを中心とした南米西海岸)の征服では、持ち込んだ天然痘流行による帝国側の戦闘力喪失が最大の原因と言われています。

 

この恐ろしい感染症も今や種痘により地球上でみられなくなり、1980年にWHOから天然痘の根絶が宣言されました。実はその天然痘根絶に尽力したのが、元国立熊本病院長の蟻田功先生でした。その蟻田先生は以前から天然痘がテロに使われる危険性を説いていました。なぜなら、天然痘根絶に続き、その予防手段である種痘も日本では45年以上も途絶え、世界の人口の半分以上がすでに天然痘に対する免疫を持たなくなったいるのです。そして、その天然痘ウイルスは、なんと米国とロシアの研究所に保管されているのです。

 

もしロシアが、今の新型コロナウイルス禍に天然痘を流行させれば、ウクライナだけでなくEU諸国、ユーラシア諸国全体を窮地に陥れることになってしまいます。私たちは再び種痘を接種する体制づくりをはじめなければなりません。私たちは、その事を9年ほど前に、公衆衛生の雑誌に発表しています(天然痘テロは起こるか? 蟻田功、武本重毅 公衆衛生77巻6号 2013年)。

Author:

武本 重毅

聚楽内科クリニックの院長、医学博士。