日本の気管支喘息治療と死亡者数の疫学
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最近わたしたちのクリニックを利用する気管支喘息の患者さんが増えています。
ここ数年、人間ドックや一般健康診断で診察しながら思っていたのですが
喘息の治療中でありながら喫煙している働き盛りの人が少なくありません。
最近では、そういう人が高齢になった時
気管支喘息と慢性閉塞性肺疾患のオーバーラップという病態になることがわかってきました。
2020年人口動態統計によれば
日本人の主な死因の第1位が悪性新生物(腫瘍)、第2位が心疾患(高血圧性を除く)、第3位が老衰、第4位が脳血管疾患、第5位が肺炎、第6位が誤嚥性肺炎、第7位が不慮の事故、第8位が腎不全、第9位がアルツハイマー病、第10位が血管性及び詳細不明の認知症、そして第11位の自殺へと続きます。
日本における気管支喘息治療は世界の中でも成功した方で、その死亡率低下に表れています。
1950年頃は人口10万人あたり約16,000人であった年間死亡数は、最近では1,500人の大台を割るようになりました。
これは喘息治療ガイドライン作成・改訂と吸入ステロイド薬販売・普及によるところが大きく
そして何よりも吸入ステロイド薬により患者の生活の質が改善しました(喘息発作で苦しむことが少なくなった)。
しかしながら昨年でも人口10万人あたり1,158人が喘息で亡くなっています。
これは喘息死亡者中
65歳以上の高齢者が占める割合は年々増加しており
2017年には90%を超えたからと考えられます。
そして、このような高齢者には
先に述べた喘息と慢性閉塞性肺疾患のオーバーラップ患者も含まれているかもしれません。
しかし今やこのような患者に対しては
吸入治療薬はステロイドだけでなく
ステロイド+β2刺激薬
さらにはステロイド+β2刺激薬+抗コリン薬の配合剤を使用できるようになりました。
このような治療の進歩により
若者だけでなく
高齢者喘息死亡を防ぐことが可能となり
死亡者ゼロを達成する日が来るかもしれません。
また、もうひとつ興味深いことに
都道府県別に喘息死亡率をみると
常に西日本で高い傾向にあります。
2017年度人口動態調査では
1位が鹿児島県、2位が宮崎県、3位が沖縄県、4位が大分県と上位を九州が占めました。
なぜ西日本で喘息死亡率が高いのか、その理由はわかっていません。
日本の九州で働く医療従事者にとって
日本人の高齢化
そして呼吸器疾患との向き合い方が問われているのかもしれません。