新生児の出血性疾患(第111回看護師国家試験問題より)
このシーズンになると
わたしが担当しています熊本市医師会看護専門学校第1・2看護学科の講義
を準備し始めます。
最近では
国家試験前対策のための集中講義も担当していますので
前年の看護国家試験を実際に解いてみて
設問の流れを読み解くところから手をつけるようにしています。
私が担当している教科は
血液・造血器、アレルギー、膠原病ですので
これらに関わるような問題には特に注意しています。
今日から1ヵ月後の7月25日に第2看護学科の講義がありますので
早速、第111回看護師国家試験を解き始めました。
そこで今朝注目したのが
設問58にありました「新生児の出血性疾患」です。
調べてみると、2021年11月30日付けで
日本小児科学会、日本産科婦人科学会、日本周産期・新生児医学会、日本産婦人科・新生児血液学会、日本新生児成育医学会、日本小児科医会、日本小児保健協会、日本小児期外科系関連学会協議会、日本産婦人科医会、日本看護協会、日本助産師会、日本助産学会、日本外来小児科学会、日本小児外科学会、日本胆道閉鎖症研究会、日本母乳哺育学会という合計16団体が共同で発信した
新生児と乳児のビタミンK欠乏性出血症発症予防に関する提言が目に飛び込んできました。
ビタミンKは
主に凝固因子第II・VII・IX・X因子(凝固阻止因子であるプロテインC、プロテインSも)が
肝臓で産生される際に必要となります。
したがって
ビタミンKが欠乏すれば
凝固障害による出血がおこることになります。
特にビタミンKが欠乏しやすいのが
新生児であり
その欠乏により新生児に出血性疾患が起こることが知られています。
生後2週以降に発症すると
頭蓋内出血をきたす症例が多く
生命に関わるようです。
ビタミンKにはビタミンK1とビタミンK2があり
ビタミンK1(フィロキノン)は
緑色野菜に広く含まれ
食物中の脂肪によって吸収が高まり
一般成人では十分量のビタミンK1が食事から摂取されています。
一方、ビタミンK2は
腸管内の細菌により合成される化合物群(メナキノン)であり
その合成量だけではビタミンKの必要量は産生されません。
ちなみに
心房細動などで血栓塞栓症の予防・治療を受けている患者さんで
ワルファリンはビタミンKのはたらきを阻害しています。
ビタミンKを含む代表的な食品としては納豆があり
納豆を食べるとワルファリンの作用が減弱しますので
食べないようにしましょう。
話をもどして
新生児にビタミンK欠乏症が起こりやすい理由としては
①ビタミンKは胎盤通過性が低く、出生時の備蓄が少ないこと
②新生児の肝臓が凝固第II因子(プロトロンビン)合成に関して未成熟であること
③ヒトの母乳のビタミンK含有量が少ないこと
④新生児の腸管が生後数日の間は無菌であり、ビタミンK2が腸内細菌叢により産生されないこと
などが指摘されています。
また胆道閉鎖症などの肝胆道系の基礎疾患がある場合は
ビタミンKの吸収障害によってビタミンK欠乏症を発症しやすいため
早期発見・早期介入が欠かせません。
ビタミンK欠乏症が原因と考えられる出血性疾患を予防するため
新生児へのビタミンK投与は必要であり
ビタミンK2シロップを哺乳確立時から与えることで
ビタミンK欠乏性出血症を予防しようという取り組みが行なわれています。