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院長日記

ノロウイルス感染と比較して学ぶ高齢者施設での新型コロナウイルス感染対策

武本 重毅

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今年の夏も終ろうとしています。

気が早いかもしれませんが、9月になれば牡蠣の季節の始まりであり、冬になればノロウイルスによる胃腸炎に注意しなければなりません。

特に合併症が多く、寝たきりの高齢者が多い

特別養護老人ホームなどの職員には注意を促したいと思います。

以下にノロウイルスと新型コロナウイルスを比べてみました。

 

ノロウイルスについて

ノロウイルスの感染経路は

  • 牡蠣などの二枚貝がウイルスで汚染され、経口摂取により感染する場合
  • 感染した調理者の手を介して飲食物が汚染され、経口摂取で感染する場合
  • 感染者により排出された下痢便や嘔吐物の中のウイルスに便器、ドアノブなどの器物が汚染され、そこに触れた手が汚染され経口的に感染する場合
  • 患者の嘔吐物が飛沫となり、近くの人が吸引し経口的に感染する場合

などがあります。

 

ノロウイルスは

感染力が非常に強く、1~2日の潜伏期の後、吐き気、嘔吐、下痢、発熱を発症します。

ノロウイルス感染者は

症状がある時と下痢症状などが軽快した後も48時間は便中にウイルス排出が続きます。

このため医療従事者、介護施設勤務者は下痢が治まって48時間直接的な患者のケアを行なわないようにしましょう。

調理者は下痢が軽快した後も3日間は調理を行なうべきではありません

二次感染を防ぐために患者および周囲の人は発症後1週間~2週間厳重な手洗いを行なう必要があります。

ノロウイルスは85℃で1分間以上加熱しないと死滅しません。アルコール消毒は効かず、次亜塩素酸ソーダ(ミルトン、ハイターなど漂白剤)で死滅します。汚染された衣類や器物はこれらの方法を用いて処理します。

 

新型コロナウイルスについて

一方、新型コロナウイルスの感染経路は

  • 感染者(これは無症状の病原体保有者を含みます)から咳、くしゃみ、会話などの際に排出されるウイルスを含んだ飛沫・エアロゾル(飛沫より更に小さな水分を含んだ状態の粒子)を吸入して感染する場合
  • 感染者からのくしゃみや咳、会話などに生じる飛沫が目や鼻、口などの粘膜に付着して感染する場合
  • ウイルスで汚染された環境に触った手眼や鼻、口などの粘膜に触れて感染する場合

などが考えられます。

 

新型コロナウイルスは

潜伏期間は1~14日間であり、曝露から5日程度で発症することが多いといわれています。ただし、オミクロン株の場合は潜伏期が2~3日、曝露から7日以内に発症します。

感染可能期間発症2日前から発症後7~10日程度と考えられています。重症例ではウイルス量が多く、排泄期間も長い傾向にあります。

新型コロナウイルスの場合は、熱、乾燥、エタノール、次亜塩素酸ナトリウムで消毒効果が期待できます。

ただし新型コロナ感染患者(疑い患者)の診療にあたる医療スタッフは、接触予防策および飛沫予防策として、ゴーグル(またはフェイスシールド)マスク手袋長袖ガウン帽子などを着用します。気道吸引などエアロゾルが発生しやすい場面においてはN95マスクの着用が推奨されます。

部屋は十分な換気が必要です。

ナースコール、テーブル、ベッド柵、床頭台などの患者周囲環境は、アルコールや抗ウイルス作用のある消毒剤で清拭消毒します。

聴診器や体温計、血圧計などの医療機器個人専用とし、使用ごとに清拭消毒します。

患者に使用した部屋の患者が触れた場所や器物やその周囲清拭消毒を行ないます。

病室内清掃を行なうスタッフは、手袋マスクガウンゴーグル(またはフェイスシールド)を着用します。

新型コロナの患者(疑い例を含む)から排出された廃棄物は、感染性廃棄物として排出します。排出する際には、廃棄物容器の表面をアルコールや抗ウイルス作用のある消毒剤含浸クロスで清拭消毒します。

Author:

武本 重毅

聚楽内科クリニックの院長、医学博士。